2019 Fiscal Year Annual Research Report
Role of SRF in memory consolidation during REM sleep
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19F19310
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
坂口 昌徳 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 准教授 (60407088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SRINIVASAN SAKTHIVEL 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2019-11-08 – 2022-03-31
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Keywords | 記憶 / レム睡眠 / 新生ニューロン / シナプス可塑性 |
Outline of Annual Research Achievements |
レム睡眠中の記憶の固定化メカニズムの大部分は不明である。最近になり、光遺伝学を使うことで中隔核という脳の場所の特定の神経細胞の活動を、レム睡眠中の期間だけに抑制すると、記憶の固定化が阻害されることが示された。この細胞群は、レム睡眠中に海馬の神経同期活動を制御することが示され、その記憶固定化との関連が予想された。実際、海馬の神経同期活動はそのシナプス可塑性に重要な役割を果たすことが知られている。しかし、レム睡眠中のシナプス可塑性と、記憶固定化との機能的因果関係は照明されていない。 一方、成人の脳では通常失われたニューロンは再生しない。 しかし海馬の歯状回という脳内のごく一部の組織では、非常に少ないものの一定数のニューロンが毎日再生されている。 これを新生ニューロンと呼ぶ。 新生ニューロンは、学習、忘却、など記憶に重要な機能を持つことが知られている。一方で記憶は睡眠に強い影響をうける。 我々は最近、新生ニューロンのレム睡眠中の発火が、記憶の固定化に必須の役割を果たすことを突き止めた。その際に、新生ニューロン上のシナプスの構造が変化しており、その記憶の固定化に関連が見いだされた。また、次世代シークエンサーを用いた遺伝子解析により、 シナプス可塑性に重要な転写因子であるSerum Response Factor が、前記の新生ニューロンを介したレム睡眠中の記憶固定化に重要な役割を果たすことを示唆するデータを得た。そこで本研究では、 新生ニューロンのシナプス可塑性に注目し、その睡眠中の記憶固定化における意義を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
レム睡眠中に記憶の固定化に関与する神経活動は謎な部分が多い。我々はレム睡眠中の、 記憶固定化に伴って睡眠中に記憶回路が成熟していく過程をイメージングによって可視化することを試みた。実際にはCa-imagingを用いて、 学習から記憶固定化、そして想起に至るまでに、睡眠中を含めた活性化した新生ニューロンを詳細に分析した。このために新生ニューロンの活動を数時間にわたって連続記録し、同じ細胞を追跡し続ける技術の開発に成功した。新生ニューロンの睡眠中に神経活動を捉えたのはこれが最初の研究となった。本方法をさらに応用し、記憶学習課題と組み合わせた検討を行った。我々は、驚くべきことに学習後に新生ニューロンの活動がレム睡眠中に一旦低下することを突き止めた。しかし一方で、ごく僅かに残った新生ニューロンの活動は、実は学習中に活動したそれが再活性化していることを突き止めた。これはすなわち、新生ニューロンがレム睡眠中の記憶の再活性化に寄与していることを示唆している。レム睡眠中の記憶の再活性化は世界でもそれをはっきりと観察した例は非常に少ない。また、睡眠中に変動する海馬歯状回の分子についてさらに詳細な解析を進め、シナプス可塑性に関与する様々な分子の変動が記録された。
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Strategy for Future Research Activity |
最近になって、 成体マウスの海馬で新生するニューロンが、 睡眠中の記憶固定化に必要であることを見出した (Neuron 107:1-14、 2020)。 その際、 シナプス構造解析やトランスクリプトーム解析の結果から、新生ニューロンのシナプス可塑性がレム睡眠中の記憶の固定化に重要であることが示唆された。 これまで、 睡眠中の記憶固定化におけるシナプス可塑性の意義は解明されていない。 そこで今後本研究では、 我々が独自に開発した超小型内視鏡と光遺伝学を組み合わせ、 睡眠中にシナプス可塑性の操作し、 その記憶固定化への意義を検証する。 2019年度の研究から、AAVによる遺伝子改変技術が確立し、カルシウム蛍光センターが効率よく海馬歯状回に感染する系を立ち上げた。さらにそれ超小型蛍光顕微鏡を組み合わせた撮影技術も確立した。また観察だけでなく、神経活動を操作する技術についても確立した(BBRC 517:520-524、 2019)。そこで本研究をさらにすすめ、新生ニューロンのシナプス可塑性と記憶固定化における意義を明らかにしていく。シナプス可塑性の睡眠中の記憶固定化における機能は明らかに出ない。本研究を進めることで、それが睡眠時の、 脳の自律的は記憶処理の根幹をなす原理を明らかにできる可能性が高い。 その破綻は記憶障害やPTSDなどの病態に関与する。 そこで本研究により、 記憶固定化におけるシナプス可塑性の意義を明らかにし、 その破綻に基づく新しい記憶障害の病態分類や治療法の開発に貢献する。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Sparse activity of hippocampal adult-born neurons during REM sleep is necessary for memory consolidation2020
Author(s)
Kumar D, Koyanagi I, Carrier-Ruiz A, Vergara P, Srinivasan S, Sugaya Y, Kasuya M, Yu TS, Vogt K, Muratani M, Ohnishi T, Singh S, Teixeira CM, Cherasse Y, Naoi T, Wang Y, Nondhalee P, Osman BAH, Kaneko N, Sawamoto K, Kernie SG, Sakurai T, McHugh TJ, Kano M, Yanagisawa M, Sakaguchi M
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Journal Title
Neuron
Volume: 107
Pages: 1-14
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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