2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19F19312
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西山 慶彦 京都大学, 経済研究所, 教授 (30283378)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
TAO JUNFAN 京都大学, 経済研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2019-10-11 – 2022-03-31
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Keywords | 逐次検定 / 自己回帰モデル / 単位根 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,オンラインで観測される経済・金融時系列データに統計的逐次解析の手法を導入し、時系列モデルにおける統計的逐次解析の理論を構築した。とくに、AR(1)モデルとsそれを拡張したAR(p)モデルを取り上げ、単位根検定の問題において、フィッシャー情報量を使った停止時を用い、その時点までに得られた情報からさまざまな統計量を推測に用いることで、単位根検定を含む時系列の統計的推測の手法を提案した。当該手法自体は1980年代にいくつかの論文で提案されたものであるが、別のアプローチによる分析で、その証明の問題点を正し、更に検定統計量と停止時の同時分布を導出した。また、その結果を用いて、停止時の期待値や分散などの特性値を数値的に計算する手法を構築した。これを用いることによって、従来の知見では難しかった当該手法の実装の際に停止時に現れるパラメータの設定方法が提案され、逐次検定法を実装可能にする研究成果である。これらの数学的貢献、また実用上の貢献は大きく、今後の応用が期待される。なお、応用上では,経済・金融市場における非定常性がもたらす危機の早期発見に応用することが考えられる。たとえば、バブルの発生や為替市場の不安定さをいち早く察知するための道具として利用可能であると考えられる。細かい点になるが、単位根を表すパラメータ以外の局外母数に関する漸近正規性も証明されており、単位根検定以外にもそれらのパラメータに関する検定を行うことも可能にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31年度中に学術誌に投稿予定であったが、原稿の完成が少し遅れており、近日中に投稿予定である。研究進展自体は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
時系列モデルへ逐次分析手法について、いくつかの方向への拡張を考えている。自己回帰モデル以外、MA, ARMA, ARIMA, ARFIMAといった様々な時系列モデルについて停止時を用いて統計的逐次解析の手法が適用することが考えられる。 特に金融時系列モデルとして最も関心が高いARCH, GARCHなどの非線形時系列モデルにおいても当分析手法が適用できると考えられ、それらのモデルの研究を行う予定である。さらに、変化点の問題についても研究を行う。膨大な経済・金融などのデータが秒単位でオンライン観測されている現状を考えると、未知の変化の変化点の早期探索,モデルの早期探知が重要な課題になっている。 また、同様の手法を用いて分析することが可能な別のモデルのクラスへの拡張を考える。具体的には、疫学で重要な分枝過程に対して統計的逐次分析手法を適用し、分枝過程の感染率(基本再生産数)などの逐次検定の問題についての研究を行う予定である。新型コロナウィルスのような感染症の感染者の数が増えていく状況を単純化して確率モデルにすると、各時点での合計の感染者の数は分枝過程としてモデル化できる。離散時間で観測された分枝過程が連続時間の拡散過程 Cox-Ingersoll-Ross (CIR) モデルで近似でき、時系列モデルと同じような統計的逐次解析手法が適用できると考えられる。応用可能になれば、例えば緊急事態宣言などの政策が発令された後、政策当局は感染症の基本再生産数が1を下回っているかどうかをできる限り早く知り、解除の意思決定を行うことが可能かどうかといった問題を解決するには有用であると考えられる。
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