2019 Fiscal Year Annual Research Report
Study of the mechanical role of viscous mantle flow on interseismic deformation in southwest Japan
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19F19323
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福田 淳一 東京大学, 地震研究所, 助教 (70569714)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LI SHAOYANG 東京大学, 地震研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2019-10-11 – 2022-03-31
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Keywords | 地震サイクル / 地震間地殻変動 / プレート境界固着 / 粘弾性緩和 / GNSS |
Outline of Annual Research Achievements |
沈み込み帯におけるプレート境界の固着は上盤の大陸プレートの弾性変形を引き起こす。これに加えて、固着によって生じる応力はマントルの粘性流動により緩和する。本研究では、プレート境界の固着によって生じるマントルの粘性流動が、西南日本沈み込み帯の地震間地殻変動に果たす役割を解明するために、有限要素法を用いた二次元地震サイクルモデルを構築した。このモデルでは、大陸・海洋プレート・スラブを弾性体、大陸・海洋マントルを粘弾性体でモデル化した。また、プレート境界の固着域はプレート相対運動速度と同じすべり欠損速度で完全に固着し、150年毎に起こる巨大地震により地震間に蓄積されたすべり欠損が完全に解放されると仮定した。このモデルでは、地震とプレート境界の固着に伴う応力変化によってマントルの粘性流動が生じる。従って、モデルから計算される地震間地殻変動は時間変化し、その時間変化のパターンはマントルの粘性率、固着域下限の深さ、地震の繰り返し間隔等に依存する。西南日本における最近のGNSSデータと過去百年間の水準測量データをモデルと比較した結果、観測された地震間地殻変動の時空間変化を説明するためには、大陸マントルの粘性率は約10^19 Pasでなければならないことが分かった。この粘性率を仮定すると、固着によって生じるマントルの粘性流動のために、地震間地殻変動は巨大地震間の全期間に亘って時間変化する。この結果は、GNSSで観測されている地震間地殻変動は、長期間に亘って時間変化する地殻変動のスナップショットを捉えたものであることを示す。また、10^19 Pasの粘性率を仮定した場合、地震間地殻変動速度の時空間変化は固着域下限の深さと巨大地震からの経過時間に強く依存する。これらの結果は、西南日本のプレート境界の固着分布を推定する際、固着によって生じるマントルの粘性流動を考慮することが重要であることを示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、有限要素法を用いた二次元地震サイクルモデルを構築し、そのモデルを最近のGNSSデータ及び過去百年間の水準測量データと比較することにより、西南日本の地震間地殻変動に対するマントルの粘性流動の重要性を明らかにした。得られた結果をまとめた論文を国際誌に投稿し、掲載された。進捗は当初の計画通りであるため、本研究課題は研究目的に沿っておおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
プレート境界の固着によって生じるマントルの粘性流動を考慮して固着分布を推定する手法の構築を行う。この目的のために、三次元的な粘弾性構造を有限要素法を用いて作成し、この粘弾性構造を用いた三次元地震サイクルモデルを構築する。まず、マントルの粘性率や固着域下限の深さ等のパラメータを変化させて地震サイクルモデルのフォワード計算を行う。計算された地震間地殻変動を媒質が弾性体と仮定した場合の結果と比較し、固着によって生じるマントルの粘性流動が固着分布の推定に与える影響を明らかにする。次に、三次元粘弾性地震サイクルモデルをフォワードモデルとして用い、プレート境界の固着分布を推定する逆解析手法の開発を行う。2019年度の研究で、二次元モデルから計算される地震間地殻変動の時空間変化はマントルの粘性率に強く依存することが明らかになっているため、マントルの粘性率とプレート境界の固着分布を同時に推定する手法を開発する。
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