2020 Fiscal Year Annual Research Report
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19F19347
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福村 知昭 東北大学, 材料科学高等研究所, 教授 (90333880)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
AMRILLAH TAHTA 東北大学, 材料科学高等研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2019-11-08 – 2022-03-31
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Keywords | スピントロニクス / 酸化物エレクトロニクス / 薄膜新材料 / 希土類酸化物 / 強磁性 / エピタキシャル成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、前期ランタノイド単酸化物の初めての単結晶をエピタキシャル薄膜として合成することに成功してきた。一方、後期ランタノイド元素はより重元素でスピン軌道相互作用が大きく、ほとんどが磁性元素として知られ、新たなトポロジカル状態の創成の観点から単酸化物の合成が興味深いが、これまで気相のランタノイド単酸化物の存在のみ知られていた。ところが最近、ガドリニウム単酸化物を合成できることがわかった。そこで今回、ホロミウム単酸化物の合成を試みた。パルスレーザー堆積法を用いて、パルスレーザーの出力、薄膜成長温度、薄膜成長時の酸素分圧を精密に最適化することで、初めての固相である岩塩構造ホロミウム単酸化物のエピタキシャル薄膜を合成することに成功した。そして、ホロミウム単酸化物はキュリー温度が約130ケルビンの強磁性体であることがわかった。すでに知られている岩塩構造ホロミウム硫化物のキュリー温度は約20ケルビンであるが、硫黄を酸素に変えた物質を合成することでキュリー温度が大幅に増加した。ホロミウム単酸化物は挟ギャップ半導体で、酸素量を調節することで電気伝導性も制御することが可能である。磁化特性については、キュリー温度の直下ではメタ磁性的な振る舞いを示し、さらに低温では強磁性の振る舞いを示した。その高温側の振る舞いは、他の岩塩構造ホロミウム化合物でも報告されている単調でないスピン配列に起因すると考えられる。負の磁気抵抗を示し、大きな異常ホール効果も観測され、磁化特性と磁気伝導特性のよい相関が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
合成を開始した当初は、ホロミウム単酸化物の薄膜合成は困難を極めたが、薄膜成長の条件を細かくふることで、最終的にホロミウム単酸化物のエピタキシャル薄膜を得ることができた。これまで気相のみが知られており、初めての固相であったが、化学的安定性が極めて乏しいということはなく、酸化防止膜をつけることで、電気特性や磁気特性を調べることが十分に可能であった。そして、ホロミウム単酸化物が良好な電気伝導を示し、他のホロミウム化合物と比べてかなり高いキュリー温度をもつ強磁性体であることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初は前年度中の論文執筆を計画していたが、磁化特性が予想より複雑なことがわかり、磁化測定を綿密に行う必要が生じた。そこで、今年度は、まずホロミウム単酸化物の磁化特性の詳細を明らかにする。特に磁場依存性や温度依存性を詳細に調べて、磁性相を明らかにする。そして早めに論文発表を行う。くわえて、ホロミウム単酸化物薄膜合成の最適化のプロセスについても、論文にまとめられるか検討し、可能なら論文発表を行う。そして次は、極低温走査型トンネル顕微鏡が直結したパルスレーザー堆積装置を用いて、強磁性半導体として知られるユーロピウム単酸化物のエピタキシャル薄膜の合成に取り組む。この物質のエピタキシャル薄膜の合成は複数のグループからあるため、比較的容易に作製できることが期待される。そして、このユーロピウム単酸化物のその場測定による、薄膜表面の原子像観察およびスピン偏極走査型トンネル顕微鏡観察を行う。それらの測定では、薄膜表面の平坦さや清浄さが非常に重要であり、測定の困難さが予想されるが、ユーロピウム単酸化物の原子レベルでの磁区観察を試みる。そして、ユーロピウム単酸化物薄膜上にサマリウム単酸化物をヘテロエピタキシャル成長させ、理論で提案されているような、界面でのトポロジカル状態の形成が生じているか調べる。 今年度は、研究代表者の福村が研究を統括してホロミウム単酸化物の物性解析を行い、研究分担者のAmrillah博士がユーロピウム単酸化物とサマリウム単酸化物薄膜の作製を行い、研究協力者の岡博文博士が薄膜の原子分解能表面観察およびスピン偏極走査型トンネル顕微鏡観察を担当する。
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Research Products
(1 results)