2020 Fiscal Year Annual Research Report
Tissue d2H value as a natural marker for tracking fish migration, movement and related physiological responses
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19F19397
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
白井 厚太朗 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (70463908)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
CHUNG MING-TSUNG 東京大学, 大気海洋研究所, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2019-11-08 – 2022-03-31
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Keywords | 回遊 / 代謝 / 同位体 / 魚類 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は血液中の酸素同位体比分析法の検討を行った.蒸留や平衡法など様々な手法について回収率や精度の検証を行った.その結果,ヘッドスペースの平衡法を使用した分析方法が最も簡便で高精度に血液・体液の同位体組成を分析可能であることを確認した.次に,血液中の酸素同位体比の変動要因を検証するため,奄美大島の様々な塩分の環境から魚試料を採取し,その血液の酸素同位体比の分析を行った.その結果,血液の酸素同位体比は周囲の環境水の酸素同位体比とほぼ平衡状態にあること,短期的に異なる塩分に移動してきた履歴を追跡可能であること,などの可能性が示された.しかし,生理・行動指標として確立するためには,より詳細な検討が必要不可欠であり,2021年度により詳細な検討に取り組む予定である. また,リン酸塩から主に構成される骨硬組織に微量に含まれる炭酸の酸素炭素同位体比を用いた回遊推定・代謝量推定についても研究を進めている.2020年度に脊椎骨に含まれる構造炭酸イオンの酸素炭素安定同位体比の変動要因について検討した,様々な海産魚類の脊椎骨の分析を進ていくうえで,有機物を除去するための前処理法により同位体組成が大きく影響を受けることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響で様々な制約を受けながら研究を進めたが,非常に興味深い研究成果が得られており,研究は順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
2021 年度は異なる塩分の環境から採取した魚類血液の分析に加え,飼育実験など環境水の履歴が既知の試料を分析することで手法の妥当性を向上させる.また,骨硬組織を使った代謝推定の研究については,2021年度は実際のサンプルへの応用を進める.淡水や海水など環境が大きく異なる場所から採取した魚について骨の分析を行い,同位体組成の変動要因について明らかにする.また,代謝状態の異なる骨の部位ごとに分析することで,内的要因と外的要因が同位体組成に及ぼす影響を評価する. これらの成果を組み合わせることで,魚類の回遊・代謝の高時間解像度指標の開発に挑む.
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