2019 Fiscal Year Annual Research Report
Exact WKB analysis, spectral networks and topological recursion
Project/Area Number |
19F19738
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
岩木 耕平 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 助教 (00750598)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KIDWAI OMAR 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 外国人特別研究員
|
Project Period (FY) |
2019-10-11 – 2022-03-31
|
Keywords | 位相的漸化式 / 完全WKB解析 / スペクトル・ネットワーク / BPS構造 / Riemann-Hilbert問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
受け入れ中の外国人特別研究員Omar Kidwaiとともに、位相的漸化式とWKB解析の関係性をもとに、位相的漸化式が定める相関函数のStokes構造に関する研究を行った。 まず、あるクラスのスペクトル曲線を位相的漸化式を用いて量子化し、得られた量子スペクトル曲線のVoros係数がみたすRiemann-Hilbert問題を定式化した。そのRiemann-Hilbert問題は、インプットとなったスペクトル曲線から定まるスペクトル・ネットワークと密接に関わる。すなわち、スペクトル・ネットワークを解析することで、Bridgelandにより定式化される「BPS構造」が定まるが、そのBPS構造に付随するRiemann-Hilbert問題が上記のそれと一致するのである。この方向性での先行研究として Allegretti による仕事があるが、我々が考察している例はいずれも先行研究で除外されている場合に相当している。 興味深いことに、これらのRiemann-Hilbert問題の比較を通じて「Bridgelandが導入したタウ函数」と「位相的漸化式の分配関数」が、ある因子を除いて一致することを示すことができる。そこからさらに、「位相的漸化式の自由エネルギーがBPS指数を用いて記述できる」という系も得られる。位相的漸化式とBPS構造は、ともに数理物理に由来を持っているものの、一見全くことなる数学的対象であったので、このような関係性が見出されたことは注目に値するように思われる。そしてこの対応は、少なくともスペクトル・ネットワークから定まるBPS構造がuncoupledの場合にはより広く成り立つと予想している。これらの成果についての論文を現在執筆中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究プロジェクトの開始当初から目標の一つとしていた「位相的漸化式とスペクトル・ネットワークの関係性」について、ある結果を得ることができた。さらに位相的漸化式とBPS構造に付随するRiemann-Hilbert問題を結びつけることにも成功したので、おおむね順調に研究は進んでいると言えよう。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は主に量子曲線が2階の微分方程式になる場合を考察したが、次年度は得られた成果の高階の量子曲線への拡張にむけた研究にも取り組む予定である。その際にはスペクトル・ネットワークがより複雑になることが予想されるので、受け入れ中の外国人特別研究員Omar Kidwaiと協力して研究を進める。
|