2019 Fiscal Year Annual Research Report
The influence of volatiles on magmatism in the Okinawa Trough and Ryukyu Arc
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19F19787
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
谷 健一郎 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 研究主幹 (70359206)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
MURCH ARRAN 独立行政法人国立科学博物館, 地学研究部, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2019-11-08 – 2022-03-31
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Keywords | 沖縄トラフ / 琉球弧 / 火山岩 / 地球化学的特徴 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度はまず受入研究機関(国立科学博物館)に収蔵されている沖縄トラフの海底火山岩コレクションについて整理・記載・カタログ化を行った。試料数が1,000以上ある膨大なコレクションのため、謝金アルバイトを雇用し、効率的に作業を行った。その結果、年度末までに全試料のカタログ化を完了した。 それらの火山岩試料のなかから、各採集地点を代表する試料を計60試料選定し、蛍光X線分析装置を用いた全岩主要・微量元素組成分析を行った。その結果、沖縄トラフ中部と南部の火山岩類について地球化学的特徴が明瞭に異なる二つの組成トレンドが存在し、それは地理的なマグマ原材料物質の違いを反映している可能性が判明した。現在はそれを裏付けるために追加の全岩化学組成分析を進めている。 また全岩組成分析と並行して分析試料の岩石薄片を製作し、斑晶鉱物組み合わせや岩石組織について記載岩石学的検討を進めた。その結果、沖縄トラフ中部の珪長質火山岩から苦鉄質なマグマとの混合を強く示唆する岩石学的証拠が多数見つかった。現在は観察が完了した薄片から順次、電子マイクロプローブアナライザーを用いて鉱物化学組成分析を行い、鉱物温度圧力計を適用して噴火前のマグマ温度圧力条件を制約するための準備を進めている。 また琉球弧の火山島については受入研究機関に試料が無いため、本年度中に北部琉球弧の代表的な火山である口永良部島・諏訪之瀬島について地質調査・試料採集を実施予定であった。しかし新型コロナウイルス感染拡大に伴って受入研究機関から国内外の出張延期が指示され、実施することが出来なかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、収蔵標本のカタログ化が完了した。 また全岩化学組成分析についてもICP質量分析計を用いた微量元素組成分析までは至らなかったが、蛍光X線分析装置を用いた主要元素・微量元素組成分析は当初見込みよりも多い試料数のデータが得られ、期待していたような地球化学的特徴の地理的な違いが明らかになりつつある。 琉球弧火山島の地質調査が実施できなかった理由も、新型コロナウイルス感染拡大による所属機関の出張中止措置という想定外の事態であり、やむを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は全岩化学組成分析についてはICP質量分析計を用いた微量元素組成分析を行い、希土類元素組成などを使ってマグマ原材料物質やマグマ生成時の部分溶融度の地理的差異や、各火山におけるマグマ組成の時間変化について、より詳細に検討を進める。 また計画よりも少し遅れている電子マイクロプローブアナライザーを用いた局所組成分析についても集中的に実施する。記載岩石学的観察から揮発性成分分析に適した火山ガラスや斑晶中メルト包有物を含む試料を選定し、本年度中に分析を行い、全岩化学組成データと組み合わせた検討を始める。 琉球弧火山島の地質調査については新型コロナウイルスの感染収束を待って速やかに現地調査を行う。また薩摩硫黄島周辺で実施予定の調査航海に乗船し、海底試料採取を行うことも検討する。
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