2019 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Novel Tellurite-Based Glasses with Superiorly High Nonlinear Optical Properties
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19F19798
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
早川 知克 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00293746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DE CLERMONT-GALLERANDE JONATHAN 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2019-11-08 – 2022-03-31
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Keywords | テルライトガラス / 3次非線形光学特性 / ガラス構造 / 銀テルル酸化物 / 酸化ビスマス / Nd3+蛍光特性 / 酸化ガリウム / 3成分系 |
Outline of Annual Research Achievements |
3次非線形光学特性の向上を目指してTeO2-Ag2Oのガラスに第3成分としてBi2O3を添加し、ガラス作製時の坩堝はアルミナとPtとした。まず、ガラス形成範囲を調べたところ12.5モル%が添加濃度xの上限であることが分かった。アルミナ坩堝では無添加でもガラス化が可能であり、Al2O3成分の混入(8mol%ほど)によりガラスが安定化したものと考えられる。密度・屈折率はxの増加と共に増大し、非線形光学感受率もx=0での0.65×10^-12esuからxとともに増大し1.17×10^-12esuであることが明らかとなった。Pt坩堝では無添加ではガラス化せず、Bi2O3添加によりガラスが作製可能となった。非線形感受率は検討したすべての組成でアルミナ坩堝で作製したものより高く、最大1.49×10^-12esuであった。これはシリカガラスの53倍で、TeO2単結晶に匹敵する高い値であった。 TeO2-Ga2O3系では第3成分としてK2Oを添加し、ガラス形成能の高い、K2O/Ga2O3=1の組成を選択し、活性化剤Nd3+の発光特性・ガラス構造・機械的・光学的特性を調査した。坩堝にはアルミナ・Pt・Auを用いた。3つのガラスを比較すると、アルミナ坩堝ではAl2O3の混入により密度・屈折率・機械的強度は低下するが、Pt・Au坩堝では大きな違いはなかった。しかしながら、Au坩堝で作製したガラスは透明性が高く、Nd3+発光特性は最も高くなることが判明した。元素分析を行った結果、Pt又はAu成分の1ppm程度の混入が見られた。光吸収測定の結果からPt坩堝で作製したときガラス内で構造欠陥が生成されることが示唆された。Judd-Ofelt解析の結果からはPt坩堝で作製したガラスの発光確率は比較的高いことが分かっているため、使用する坩堝によりガラスの構造欠陥が希土類の蛍光特性に影響していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
TeO2-Ag2O-Bi2O3の3成分相図の作成は順調に進んでいる。テルライトガラスのガラス形成を助ける第3成分としてZnOの添加についても平行して検討を進めている。この取組はTeO2-ZnO-Na2O(TZN)のゾルゲルガラス作製およびその構造解析に有用な情報を提供し、具体的にはZn-XAFSを用いてZn配位数をあいちSRセンターにて調査している。コンピュータを用いたガラスのモデリングについても取り組みを始めた。TZNガラスにてZnO, Na2O等モル量組成にてZn配位数の異変、それに関連してガラス転移温度、弾性率がZnO-Na2Oの組成の漸近構造から逸脱、異常が生ずることが分かった。 TZNガラスのゾルゲル合成についてはTeアルコキシドの合成を行い良質な結晶を得ることができた。今後、X線回折、ラマン分光、第一原理計算などを用いて構造を調査する。 現在準備中の論文は、ラマン分光法を用いたガラス構造の解析、低波数ラマンデータからボソンピーク解析、ガラスの中距離秩序を示す相関距離の分析、Zn-Oの配位数のXAFS分析に関するものである。また、希土類添加テルライトガラスについては発光寿命測定、量子効率分析、Judd-Ofelt解析による発光特性の予測を行っている。TeO-K2O-Ga2O3(TKG)ガラスやTZNガラスについて本解析を適用し、理論的な発光特性の予測を行っており、これら成果についても論文を準備している。 テルライト結晶を超える3次非線形光学特性を持つガラスの開発では坩堝の選択は甚大な影響がありガラス組成の選択とともに本研究で検討を進めている。テルライト材料の中でもっとも高い非線形光学特性を持つα型テルライト結晶の性能に迫るガラス組成の目途は上記のように得られている。高いガラス形成能を併せ持つガラス組成の探求が産業展開には不可欠であり、さらに研究を進めなければならない。
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Strategy for Future Research Activity |
放射光を用いた構造評価を実施する。SP8及びあいちシンクロ施設にて予備的実験を済ませており、組成比を変化させたガラスの2体間分布関数PDFをXAFSおよび異常X線散乱AXS法により測定する。具体的にはテルライトガラスの化学的安定性、機械強度、熱的安定性を向上させるための第3成分の検討を行う。検討すべき組成はTeO2-K2O-Ga2O3とTeO2-Ag2O-Bi2O3に絞り込みを終えている。3成分状態図を作成し、前者ではNd3+, Er3+, Ho3+レーザーシステムを開発可能とする添加希土類イオンの発光特性評価、また後者では非線形屈折率係数の評価を行う。得られた実験結果は第1原理計算結果と照合し、テルルの酸素結合状態の影響を受けるLUMO-HOMOエネルギーギャップ、非線形屈折率係数の原因である超分極特性との関係を明らかにする。ゾルゲル法によるTeO2-ZnO-Na2Oガラスの作製についても、原料となるTeアルコキシドの合成に成功しており、ガラス薄膜の作製に取り組む。空気中の水蒸気との反応性が著しいため、乾燥雰囲気のグローブボックスを用いた合成の環境整備を進める。Teアルコキシド原料は市販されていないため、研究室で合成したものを用い、その基本的な構造に関する研究も同様に行っていく。XRD, Raman, FTIR, NMRそして分子構造の第1原理計算に取り組む予定である。希土類イオンを添加したものについてはその発光特性を調査する。そして、Judd-Ofelt理論による発光特性の理論予測も行い、論文発表する計画である。コンピュータを用いたガラス構造のモデリングにも取り組みたいと考えている。最大の目標はα型テルライト単結晶を凌駕するガラス材料の開発である。ガラスの安定性も重要であり、両者を兼ね備えた新しいガラス材料の開発にチャレンジする。
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Research Products
(10 results)