2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Novel Tellurite-Based Glasses with Superiorly High Nonlinear Optical Properties
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19F19798
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
早川 知克 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00293746)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DE CLERMONT-GALL JONATHAN 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2019-11-08 – 2022-03-31
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Keywords | テルライトガラス / 3次非線形光学特性 / ガラスi構造 / 異常X線散乱 / X線微細構造スペクトル / 銀テルル酸化物 / テルルー亜鉛ーナトリウム / ボソンピーク |
Outline of Annual Research Achievements |
異常X線散乱実験AXSおよびX線吸収微細構造測定EXAFSを行い、非線形光学特性の高いAg2O-TeO2ガラスの構造データを取得した。最近接元素構造に敏感なAg-EXAFSデータからはAg-O距離として2.3Åを得るとともに、精密なEXAFSスペクトル分析により第2近接元素としてAg-Ag相関に関する情報を得て、溶融時間により作り分けられたガラスの光学的バンドギャップは、Ag-Ag相関に起因することが示唆された。元素選択的実験手法としてAXSデータを取得したところ、Ag-O、Ag-Ag及びAg-Te相関距離として2.3、2.9、3.4Åが得られた。そこで、AXSデータを用いて逆モンテカルロシミュレーションによりガラス構造を推定した。その結果、Ag-O配位数としてCN=3.8, Ag-Ag配位数として1.94の値を得て、これらはEXAFS分析結果とも定性的に一致することが分かった。TeO2-ZnO-Na2Oガラスについてはレーザー発光中心となるNd3+イオンを添加した際のガラス構造変化をZnO濃度の異なる系統的な組成にて調査を行い、ガラス構造の安定化に寄与する亜鉛―酸素5配位構造ZnO5がZnO濃度x=7.5%molで最も高くなること、Nd3+添加試料ではそれが10%molに移行することが分かった。Nd3+発光特性はZnO濃度の増加とともに高くなるが、ZnO濃度が15%molを超えるとガラスの結晶化が促進され、ガラス構造の安定化の観点から10~12.5%molが最適であることが分かった。ガラス構造の連結性の情報について低波数ラマン実験を行い、ボソンピーク解析から得られる中距離秩序に関する情報を得た。結果、ZnO濃度とともにガラスの中距離秩序はNd添加の有無の影響を受け、ZnO濃度5~15%molでは緩やかに上昇しガラスの安定化に寄与していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
TeO2-ZnO-Na2O(TZN)ガラス系ではあいちシンクロトロン施設においてX線全散乱データを取得し終えて、2体間分布関数の解析を始めている。ガラスに光機能性を付与するNdイオンの挙動についてもガラス構造の観点から詳細なデータが得られており、X線散乱データおよびZn-K吸収端のX線吸収微細構造の解析も進んでおり、逆モンテカルロ(RMC)法によるガラス構造モデルの解析へと進んでいる。 TeO2-Ag2Oガラスでは異常X線散乱データによりRMCシミュレーションを行い、ガラスの構造モデルの構築が可能となっている。その真偽検証はEXAFSデータとの照合により進めており、得られた構造モデルの妥当性が評価できている。第1原理計算からはAg-TeO3クラスターの電子構造を調査し、両者相対距離の減少に従いHOMO-LUMOエネルギー差が減少することが示唆されている。クラスターサイズを大きくし、より正確にガラスの光学的バンドギャップを予測するために、RMCシミュレーションにより得られたガラス構造をAg周りで複数抽出し、第1原理計算を行う計画を立てている。また、中性子散乱実験にも着手し、Te-O, Ag-O, Ag-Ag、O-Oの2体分布関数を得ている。 また、Teアルコキシドを用いたTeO2-ZnO-Na2Oガラス薄膜の作製も進んでいる。薄膜作成条件を調整し、薄膜構造の分析をラマンマッピング法により取得している。テルライトガラスの薄膜化そしてそこにNd, Er, Ybなどの希土類イオンを添加することにより薄膜デバイスへと展開が可能である。ガラス構造の観点からも溶融法で得られたTZNガラスの構造とゾルゲル薄膜法により得られた膜の原子構造とを比較検討することにも取り組み始めている。光学特性の評価はJudd-Ofelt解析を用い、論文執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
TeO2-Ag2Oガラスについて中性子散乱実験を2021年4月16-18日にJ-PARC MLF NOVAにて行った。得られたデータの解析をほぼ終えており、Te-O, Ag-O, Ag-Ag、O-Oの2体分布関数を得た。異常X線散乱及びX線吸収微細構造と、これらのデータをRMCシミュレーションに入力し、さらに精密なガラス構造モデルを構築することを計画している。このガラス構造モデルは2.8-2.9Åに存在するAg-Ag相関の高さがガラスの光学的バンドギャップと3次非線形光学感受率の向上に寄与することが示唆されており、RMCシミュレーションにより得たガラス構造をAg周りで一部抽出を行い、Gaussian09などで第1原理計算を行うことを計画している。これによりAg-Ag相関の有無が光学的バンドギャップに与える影響を現実的な構造データをもとに予測することが可能となり、それはまた3次非線形光学特性の理論予測をも可能となる。ガラス作成ではTeO2-Ag2OにBi2O3を添加した組成系も検討を進めており、ガラスの諸特性の分析に加えて、3次非線形光学感受率の測定、また、一部組成については異常X線散乱実験を行っている。さらに分析を進める予定である。 TeO2-ZnO-Na2Oガラス系についてもガラス構造のモデリングを進めている。こちらの系ではNdイオンの添加によりレーザー特性の理論予測(Judd-Ofelt解析)を進めてる。さらに材料合成では溶融法によるガラスの作製はほぼ終え、ゾルゲル法による薄膜試料の作製を進めていく。ガラス構造の分析では熱分析、高温X線回折実験、高温ラマン実験を進めており、ガラスの結晶化挙動についても分析を行っている。これはガラス内部に結晶と同様の構造を誘起するという透明結晶化ガラスへと展開させるためであり、論文を準備中である。
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Research Products
(12 results)