2019 Fiscal Year Annual Research Report
Regulatory mechanisms of selective mitochondrial degradation via ubiquitin-related pathways
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19F19816
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡本 浩二 大阪大学, 生命機能研究科, 准教授 (40455217)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SCHUSTER RAMONA 大阪大学, 生命機能研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2019-11-08 – 2022-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / オートファジー / 翻訳後修飾 / ユビキチン / 出芽酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
余剰または不良ミトコンドリアを丸ごと隔離・除去する仕組みは、単細胞から多細胞の真核生物まで保存された基本的な仕組みであり、細胞の自食作用「オートファジー」を利用していることから、「マイトファジー」と呼ばれている。マイトファジーはミトコンドリアの量や品質の管理に寄与していると示唆されており、ヒトの様々な疾患とも関連していると考えられているが、それらの病態を理解するのに不可欠な分子機構は未だ多くの謎に包まれている。本研究の目的は、出芽酵母のマイトファジーの制御において、ユビキチン関連経路がどのように機能しているかを解明することである。この目的を達成するため、マイトファジーの必須タンパク質Atg32のユビキチン化とその分子基盤を同定し、マイトファジー制御の分子機構を明らかにしてゆく。これまでの研究で、Atg32の一部は小胞体へ局在し、小胞体の膜貫通型ユビキチンE3リガーゼDoa10によってユビキチン化され、プロテアソーム系で分解されることで、タンパク質レベルを負に制御されていることが示唆されている。
そこで本年度では、小胞体への局在がDoa10によるAtg32のユビキチン化に必要であるかどうかについて解析を進めた。その結果、(1)ペルオキシソーム膜へ強制的にアンカーさせたAtg32の変異体(Atg32-pex)はDoa10と相互作用しないこと、(2)Atg32-pexのタンパク質レベルはDoa10欠損で変動しないこと、(3)Atg32-pex変異体によるペルオキシソームの分解はDoa10欠損による影響を受けないことがわかった。これらの知見は、Atg32は小胞体膜上という限られた場において、Doa10によりユビキチン化される可能性を提起している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのデータから、Atg32は主にミトコンドリア外膜へ標的化されるが、一部は小胞体へと運ばれ、Doa10によるユビキチン化を受けて分解されると考えられる。この場合、Atg32が小胞体へ局在することが、ユビキチン化の前提条件となる。この仮説を検証するため、異種オルガネラのペルオキシソームへAtg32を人為的にアンカーさせることで(Atg32-pex)、Doa10によるユビキチン化を回避できるかどうかを調べることとした。なお、先行研究で、Atg32-pex変異体がオートファジーによるペルオキシソームの分解(ぺキソファジー)を促進することがわかっている。
上記のAtg32-pex変異体について、マイトファジー誘導条件下でATG32遺伝子のプロモーターにより発現させ、ウェスタン解析により調べた結果、Doa10の有る無しでAtg32のタンパク質レベルに有意な差はないことが明らかとなった。加えて、Atg32-pex変異体が駆動するぺキソファジーの効率は、Doa10の有る無しでほとんど変わらないこともわかった。さらに、同変異体の局在パターンを可視化するため、3コピーのGFPをタギングしたAtg32-3xGFP-pexを構築し、酵母細胞で発現させて、蛍光顕微鏡観察を行なった。その結果、Doa10欠損細胞の野生型Atg32-3xGFPで見られる部分的な小胞体局在は、Atg32-3xGFP-pexについては検出されず、ペルオキシソーム局在のみが観察された。
このように、実験系を工夫することにより、タンパク質の発現レベルや細胞内局在の多角的な解析が可能となっただけでなく、ミトコンドリア外膜タンパク質が小胞体へも局在し、ユビキチン化されるという予想外かつ興味深い発見が裏付けられたことから、本研究計画はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
真核細胞において、タンパク質へ付加されたユビキチンを切断し、遊離ユビキチンの細胞内プールを一定に保つためのユビキチンプロテアーゼ(DUB)が、細胞の恒常性に重要であることが示唆されている。しかしながら、Atg32に対して、DUBが作用しているのかどうかは、まだ調べられていない。
そこで今後は、酵母マイトファジーにおけるDUBの関与を明らかにしてゆく。具体的な研究計画として、(1)22種類のDUBをコードする遺伝子の破壊株(市販)に対し、マイトファジープローブの発現プラスミドを導入する。同プローブは、マイトファジーによってミトコンドリアが液胞(酵母のリソソーム様オルガネラ)に運ばれると、分解に耐性な赤色蛍光タンパク質(mCherry)が遊離・蓄積するため、マイトファジーを定量解析できる。(2)前述の形質転換体をマイトファジー誘導条件で培養し、細胞抽出液を調製、タンパク質をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離した後にウェスタンブロッティングを行い、mCherry抗体を用いて遊離mCherryを検出する。(3)野生株と比較して遊離mCherryの蓄積が抑制されている遺伝子破壊株について、他のオートファジー関連経路に影響があるかどうか調べ、マイトファジー関連DUBを同定する。(4)同DUB欠損株におけるAtg32の発現プロファイルを調べるとともに、局在やタンパク質間相互作用を解析してゆく。
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