2019 Fiscal Year Annual Research Report
古代東アジアにおける対外関係と地域支配の連関についての研究
Project/Area Number |
19H00015
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Principal Investigator |
柿沼 亮介 早稲田大学, 高等学院, 教諭
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Project Period (FY) |
2019
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Keywords | 地域支配 / 外交使節 / 渡来系氏族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、古代国家による地域支配の方法が対外関係とどのように連関しているかという点について、境界領域となる地域や人々の支配のあり方から明らかにし、領土問題や移民といった現代的な課題を相対し得るような古代国家像を提示することを目的とする。 そこで、外交使節の入境経路における現地での対応や、外国からの移住民や渡来系氏族の国家による支配のあり方について検討を行った。まず中国の江蘇省において、円仁の『入唐求法巡礼行記』の記述をもとに、承和の遣唐使一行が中国において最初に上陸した如東から揚州まで運河に沿って調査し、外交使節への現地における接遇のあり方について検討した。また中国の連雲港では、在唐新羅人集落が所在した宿城村跡や、円仁が上陸した高公島において調査を行い、唐に移住した新羅系の人々が果たした国際通交上の役割について検討した。日本においては、武蔵国の高麗郡や新羅郡などの渡来系氏族を中心に建郡された地域の建郡の背景を比較し、渡来系氏族への国家による支配のあり方を検討した。 こうした調査・研究の結果、古代の中国における日本や新羅からの外交使節の来着地においては、公的な対応だけでなく民間のネットワークによる支援が行われたが、両者は必ずしも組織的な補完関係にあったわけではないことや、渡来系氏族を移配しての建郡には対外関係の影響がみられるが、背景として従来から指摘されてきた小中華意識については時期による質的な差異があることが明らかとなった。さらに以上を踏まえ、境界領域となる地域や人々を素材とした授業プログラムの開発を行った。
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