2019 Fiscal Year Annual Research Report
三燕における金工品の研究-日本列島・朝鮮半島における古墳出土金工品の源流-
Project/Area Number |
19H00018
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Research Institution | 宮内庁書陵部 |
Principal Investigator |
土屋 隆史 宮内庁書陵部, 研究員
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Project Period (FY) |
2019
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Keywords | 三燕 / 胡籙金具 / 古墳時代 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、中国東北部の三燕における胡籙(騎馬遊牧民の矢を入れる道具の一種)の金具に注目した。具体的な研究目的は、胡籙金具の地域的特徴の抽出、編年の作成、そして朝鮮半島南部への胡籙金具の伝播過程の解明である。中国での資料調査を通して、胡籙金具を始めとした金工品の詳細な情報を収集した。とくに喇嘛洞IM5号墳出土品の調査に際して、高画質の写真を撮影することにより、表面に2頭の鳳凰が向かい合う文様が彫金で表現されていることを発見した。 このようにして得られたデータを分析した。三燕の胡籙金具は、背板に装着される短冊形吊手金具、収納部に装着されるW字形金具、帯に装着される鉸具と逆心葉形銙板で構成される。とくにW字形金具は出土数が多く、文様から複数の系列に分類するとともに、形態の変化から4つの型式に分類することができた。この型式変化をもとにW字形金具を4つの段階に区分し、W字形金具と共伴する吊手金具と帯金具にもこの4段階をあてはめることで、三燕における胡籙金具の編年を作成した。ただし、共伴遺物の編年的位置づけ等からW字形金具の型式変化を検証することができておらず、また各段階に実年代を付与することもできていないため、今後は共伴遺物の分析から編年の確度を高めていく必要がある。 さらに、三燕の胡籙金具の影響を受けたと考えられる朝鮮半島南部の初期の事例(慶山林堂7B号墳主槨例)には、三燕の胡籙金具編年でいう4段階の特徴がみられ、三燕から朝鮮半島南部への胡籙金具の伝播は、三燕の胡籙金具の末期頃であったことを確認した。また、朝鮮半島南部の初期の胡籙金具に多くみられる双方中円形の吊手金具は三燕にはみられず、これは高句麗からの伝播であったと推定した。 以上のように、課題はあるものの、三燕における胡籙金具の地域的特徴や朝鮮半島南部への伝播過程について整理することができた点は成果であったと考える。
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