2019 Fiscal Year Annual Research Report
地域の素材を活かした高機能性シラスセメント硬化体の開発に関する研究
Project/Area Number |
19H00261
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Principal Investigator |
福永 隆之 鹿児島工業高等専門学校, 技術室, 技術職員
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Project Period (FY) |
2019
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Keywords | シラス / ポゾラン材料 / 硫酸塩 |
Outline of Annual Research Achievements |
鹿児島県に広く分布する「シラス」は堆積量が750億m^3と多く, 鉱物組成もシリカとアルミナの非晶質粉体で構成されているため, 工業製品の材料として最適である. しかし, 現在シラスの使用用途や使用量は少なく, シラスの新たな活用方法が望まれている. コンクリートの劣化現象の一つに硫酸による劣化がある. 九州地方は, 火山や温泉が多くその周辺では地盤中に含有されている硫酸塩の影響でコンクリートが損傷を受ける事例がある. 特に鹿児島県は、桜島や霧島連山を始めとする火山が多く存在しており、硫酸塩劣化の対策が求められている. そこで本研究は前述したシラスの新たな活用法を提案するために, シラスを混和材として利用した耐硫酸塩性の高いセメント硬化体を開発することを目的とした. 以下に, その概要を説明する. はじめに, シラスを分級し各粒度におけるシラスの鉱物組成や元素分析などの化学的性質を明らかにした. その結果, 微粒部の鉱物組成は火山ガラスなどの非晶質で構成されており, 粒径が大きくなるほどその混合割合が低くなる結果を得た. その後, 非晶質で構成されているシラスを用いて供試体を作製した. また, 比較用としてシラス未混和の配合も作製した. 作製した供試体は材齢7日まで水中養生を実施し, その後, 硫酸塩溶液に浸漬した. なお, 硫酸塩溶液の濃度は10%, 水温は40℃である. 浸漬した供試体は, 所定の浸漬日数で膨張率, 超音波法による膨張率の測定, 化学組成を測定した. その結果, シラスを混和材として利用した供試体は, OPCのみの配合と比較して, 膨張率が大幅に低下することを確認した. これは, セメント量が少なくなったことに加えて, シラスとセメント水和物がポゾラン反応を起こし, 緻密になることによって, 硫酸イオンが供試体内部へ浸透できなかったためであると推察した. 以上の結果より, シラスを混和材として利用することにより, 硫酸塩環境に強いセメント硬化体を作製できる可能性を示した. 今後は長期的な耐久性について検討する必要がある.
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