2019 Fiscal Year Annual Research Report
イオン液体抽出を用いた陽イオン性薬毒物分析の高精度化
Project/Area Number |
19H00292
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Research Institution | 千葉県警察本部 |
Principal Investigator |
濵本 拓也 千葉県警察本部, 地方公務員
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Project Period (FY) |
2019
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Keywords | イオン液体 / マイクロ抽出 / 薬毒物分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 研究目的 薬毒物中毒事案の発生時には, 原因究明や犯罪捜査のため, 中毒者の体液や遺留された飲料などの各種水溶液試料の分析が行われる. しかし, 分析対象がイオン性薬毒物である場合, 高親水性であるため抽出が容易ではなく, 煩雑な前処理が必要となる. 以前我々は, 高いカチオン抽出能を持つイオン液体(IL)である2-エチルピリジニウム・ビス(ノナラルオロブタンスルホニル)アミド([EPyH][NNf_2])を用いた, カチオン薬毒物のマイクロ抽出法およびHPLCによる一斉分析法を検討した. しかし, 一部のカチオン薬毒物(コリン作動薬)でILの影響によるピーク形状の悪化や感度低下が見られた. そこで本研究では, 分析の高精度化を図るため, 抽出条件およびHPLC条件の改善を試みた. 2. 研究方法 カチオン薬毒物は, コリン作動薬2種(ネオスチグミン・ピリドスチグミン)を対象とした. ILは, [EPyH][NNf_2]の[EPyH]^+を1-メチルイミダゾリウムイオン([MImH]^+)で置き換えた[MImH][NNf_2]を用いた. カチオン薬毒物の水溶液に[MImH]^+と[NNf_2]^-の各水溶性塩の水溶液を順次添加してin situ IL生成によるマイクロ抽出を行い, 抽出後のILに塩化セシウム水溶液を添加してIL成分を沈殿させた後50℃で10分間加熱して, 遠心分離後の上清を分析試料とした. HPLC分析は, ペンタフルオロフェニル基結合型カラムを用いた逆相条件(UV検出またはMS検出)により行った. 3. 研究結果 IL種の変更および抽出後ILへの塩化セシウム水溶液の添加により, コリン作動薬をILから水相へと定量的に逆抽出することができた. また, 分析試料からIL成分を除去できたことで, HPLC分析を逆相条件で行うことが可能となり, ピーク形状の改善や感度の向上も見られた. 今後は, 本法を他のカチオン薬毒物にも適用可能か検証する.
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