2019 Fiscal Year Annual Research Report
関節リウマチの治療効果改善を目的とした新規血中トシリズマブ濃度測定法の開発
Project/Area Number |
19H00349
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Principal Investigator |
望月 啓志 浜松医科大学, 医学部附属病院, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2019
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Keywords | LC-MS/MS / 抗体医薬 / 関節リウマチ |
Outline of Annual Research Achievements |
抗IL-6受容体抗体であるトシリズマブ(TCZ)の血中濃度測定には主にELISA法が用いられるが、交差反応や試薬ロット差などの種々の問題がある。近年、ELISA法の問題点を克服するため、定量的標的プロテオミクスによる方法が開発されているが、既存の方法は抗体精製やトリプシン消化に多大な時間を要するため、臨床には普及していない。本研究では、抗体精製の省略、固相化トリプシンを用いた迅速消化により前処理時間を短縮した血中TCZ濃度のLC-MS/MS測定法を開発し、関節リウマチ(RA)患者への適用性を評価した。 Orbitrap型質量分析計により、TCZ由来のペプチドを同定した。抗体精製を行わず、患者血清を還元アルキル化した後、固相化トリプシン消化を行い、LC-MS/MSに導入した。国際ガイダンスに従い測定バリデーションを実施した後、RAに対してTCZを皮下または静脈内投与された患者を対象とし、本測定法により血中TCZ濃度を測定し、ELISA法による測定値と比較した。 TCZの相補性決定領域を含み、血清由来のピークと分離可能なペプチドをシグネイチャーペプチドとして定量に用いた。固相化トリプシンによる消化時間は30分であり、LC-MS/MSによる分析時間は15分であった。検量線は2-200μg/mLの濃度範囲で直線性を示し、その定量下限は2μg/mLであった。本測定法で得られた真度および精度は国際ガイダンスに準拠していた。本測定法によるRA患者の血中TCZ濃度は、皮下および静脈内投与において、それぞれ2.4-63.5μg/mL、5.8-28.9μg/mLであり、ELISA法による測定値と良好に相関した(r=0.82)。 本研究によりTCZの血中濃度モニタリングに有用な簡易・迅速なLC-MS/MS測定法が確立されたことで、より有効性の高いRA治療実現に繋がることが期待される。
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