2019 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H00366
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Principal Investigator |
嶋田 沙織 筑波大学, 附属病院, 薬剤主任
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Project Period (FY) |
2019
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Keywords | 抑肝散 / 偽アルドステロン症 / 低アルブミン血症 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的 : 抑肝散(YK)による副作用として、低カリウム(K)血症を主症状とする偽アルドステロン症が知られている。本副作用は甘草含有量が2.5g/日以上の漢方薬で発症頻度が高まると言われており、YKは甘草含有量が少ないため(1.5g/日)発症頻度は低いと考えられてきた。しかしYKによる低K血症の報告は後を絶たず、重症化する例もある。これまでに我々は、YK投与による低K血症のリスク因子として、高齢者、女性、高用量に加え低アルブミン(A1b)血症を指摘した。近年では、認知症の周辺症状改善目的だけではなく周術期のせん妄予防にYKを使用するが、周術期は低A1b血症を伴う場合が多い。そこでYKを安全に使用するために、周術期症例を追加して低K血症の発症に及ぼす影響を明らかにした。 研究方法 : YK投与患者395名(男/女 : 210/185、年齢 : 69.6歳)を対象に、YKの投与期間と臨床検査値を調査した。 研究成果 : 94名(23.8%)がYK投与開始21日(1-1647日)後に低K血症を発症した(発症群)。発症群における周術期投与の割合は、低K血症を発症しなかった非発症群と比較して高く(30.9 vs. 14.6%, P<0.05)、低A1b血症の割合も高かった(52.1 vs. 37.9%, P<0.05)。COX比例ハザード解析より、低K血症のリスク因子として周術期投与が最も大きく(HR : 5.89)、次いで減量せずに投与(1.89)、低A1b血症(1.88)、女性(1.82)の順であった。 周術期投与を含むYK投与患者(周術期投与の割合 : 18.5%)を対象とした今回の検討では、周術期投与を含まない場合と比べて低K血症の発現率(23.8%)が2%上昇し、発現までの投与日数(21日)が3/4に短縮した。このことはYKの周術期投与が、認知症への投与よりも低K血症のリスクが高まることを示唆している。
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