2019 Fiscal Year Annual Research Report
免疫抑制薬タクロリムスの赤血球移行を制御する因子の解明
Project/Area Number |
19H00370
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Principal Investigator |
吉川 直樹 宮崎大学, 医学部, 薬剤師
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Project Period (FY) |
2019
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Keywords | タクロリムス / 赤血球 / FKBP |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的 : 免疫抑制薬タクロリムスは、血液中においてそのほとんどが非作用点である赤血球に局在する。しかしながらその詳細な機序は不明な部分が多い。血液中における薬物の存在様式は、薬物体内動態の中でも特に分布過程における重要な特性である。そこで本研究では、タクロリムスの赤血球への局在を制御する因子について検討した。 研究方法 : ヒトより採取された血液から、赤血球を分離・培養した。培養環境を調整した赤血球に対しタクロリムスを暴露させ、培養液から赤血球への薬物移行を定量的に評価した。赤血球局在の制御因子としてはFK506結合タンパク質(FKBP)とATP駆動トランスポーターに着目した。タクロリムスと赤血球内FKBPの結合の寄与はRapamycinによる競合阻害実験により評価し、赤血球外FKBPとの結合の寄与は培養液中のFKBP量を調整することで評価した。また、赤血球中のATP量の調整および選択的阻害剤を用いてATP駆動トランスポーターの寄与を評価した。 研究成果 : Rapamycin処理により、培養液中のタクロリムス残存率は顕著に増大した。また、培養液中のFKBPの存在は、濃度依存的に培養液中のタクロリムス残存率を増大させた。さらに、タクロリムスとFKBPを予め作用させ赤血球に曝露させると、培養液中のタクロリムス残存率が増大した。一方、ATP駆動トランスポーターの寄与は小さいことが示された。以上より、赤血球内でのFKBPとの結合はタクロリムスの細胞内蓄積に関与しており、赤血球外におけるFKBPとの結合はタクロリムスの細胞内移行を制御していることが示唆される。本研究において、生体内でのタクロリムスの赤血球移行におけるFKBPの役割を一部明らかにした。本研究成果はタクロリムスの新たな体内動態制御理論の構築につながる極めて有益な知見である。
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