Outline of Annual Research Achievements |
【研究の目的】好中球ゲラチナーゼ関連リポカリン(neutrophil gelatinase-associated lipocalin ; NGAL)やL型脂肪酸結合蛋白(Liver type fatty acid binding protein ; L-FABP)は急性腎障害(AKI)の早期診断の尿生化学マーカーである. 一方, 尿沈渣検査では尿細管上皮細胞や顆粒円柱の出現が腎実質障害の形態的マーカーとなり, 腎前性AKIと腎性AKIの鑑別に有用との報告がある. しかし, 先述の尿生化学マーカーと尿沈渣における形態的な腎障害マーカーとの関連についてはいまだ明らかでない. そこで本研究では, 尿中NGALおよびL-FABPと尿沈渣成分との関連を検討することを目的とした. 【研究の成果】検査終了後の残余尿132件(72例)を用いて, 尿沈渣検査(目視法)で白血球, 尿細管上皮細胞, 硝子円柱, 顆粒円柱, 上皮円柱, ろう様円柱の出現数を尿沈渣検査法2010に則り算定し, 遠心上清を用いてL-FABPおよびNGALを測定した. その結果, L-FABPは尿細管上皮細胞, 硝子円柱, 顆粒円柱, および上皮円柱の出現数が多いほど高値を示し, NGALは白血球, 尿細管上皮細胞, 顆粒円柱の出現数が多いほど高値を示した. また, L-FABP, NGALともにろう様円柱陽性群で陰性群に比べ有意に高値を示した. 各尿沈渣成分によるAKIの診断能をROC解析により評価した結果, 顆粒円柱がAUROC : 0.742[0.659-0.824, 95%CI]と最も良い指標であった, さらに尿沈渣成分の出現数と円柱の種類から尿沈渣スコアを作成した結果, NGALと尿沈渣スコアとの相関はRho=0.323(P<0.001), L-FABPはRho=0.601(P<0.001)であった. 同一症例を除外した72例では, NGAL : Rho=0.632(P<0.001), L-FABP : Rho=0.743(P<0.001)であった. 以上の結果より, L-FABPは尿細管上皮細胞および各種円柱の出現数と関連し, 一方でNGALは尿細管上皮細胞や顆粒円柱の出現数と関連すると考えられた. したがって, 尿細管上皮細胞の出現数が多い, あるいは円柱の出現数, 特に顆粒円柱やろう様円柱の出現数が多いほどNGALやL-FABPは高値を示し, さらに尿沈渣スコアはAKI診断において有用な指標と考えられた.
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