2019 Fiscal Year Annual Research Report
マウスの生育過程・妊娠・出産期のオキシトシンに結合する担体C4aの生理的役割の検証
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19H00388
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Principal Investigator |
由比 光子 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 技術補佐員
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Project Period (FY) |
2019
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Keywords | オキシトシン / C4a / RAGE |
Outline of Annual Research Achievements |
近年臨床研究により、自閉スペクトラム症(ASD)へのオキシトシン(OT)の点鼻投与による症状の改善効果の検討がなされている。一方、点鼻投与されたOTが脳関門を通過するメカニズムについては、共通した認識が持たれていない。申請者らは、OTを脳内へ輸送する担体候補の探索と検証を行い、Receptor for Advanced Glycation End-products(RAGE)がその役割を担っていることを証明した。この過程で補体のC4aが、RAGEにもOTにも直接結合することを新たに見いだした。そこで、古典的経路で活性化され炎症などで値が上昇する因子C4aと、OTとの生理的関連を確認する目的で検討を行った。 社会性に関与するOTは本来、妊娠、出産というライフイベントに大きな役割を果たすホルモンである。本課題ではこの期間の変動に注目し、C4aがOTの担体として、どのような生理的な役割を果たすことができるかを検証した。雌の野生型(ICR)およびASDモデルマウス(CD38-/-)の 産後3~5日(血液のみ), 2, 4, 8週齢、妊娠3週目、出産後(3~5 日)の脳脊髄液(CSF)、血液を採取し、C4aの濃度をEnzymeImmunoassay(EIA)にて測定した。 血漿中のC4a値は成長とともに増加した。妊娠期にはCD38-/-ではさらに増加したのに対し、野生型マウスでは有意に減少し、出産後も減少した。週齢の増加と妊娠期におけるC4a値の2系統における逆転現象は血漿中OTの変化と逆に相関していた。この結果は、妊娠期のC4a濃度から、CD38-/-は炎症傾向が強いことを示唆し、母親マウスにとって非自己である胎児への攻撃反応が強いのかもしれない。そのことが出生後のASD症状に影響するのかもしれない。また、過剰なC4aがRAGEに結合することによりOTの輸送を障害する可能性も考えられる。
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Research Products
(4 results)