2019 Fiscal Year Annual Research Report
熱可塑性形状記憶素材を用いた放射線治療用ボーラスの密着度と線量計算精度の検証
Project/Area Number |
19H00439
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Research Institution | 愛知県がんセンター |
Principal Investigator |
青山 貴洋 愛知県がんセンター, 放射線治療部, 診療放射線技師
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Project Period (FY) |
2019
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Keywords | 放射線治療 / ボーラス / 形状記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】 放射線治療では、皮膚表面の病巣を治療する場合にボーラスと呼ばれるシート状の皮膚等価材が使用される。ボーラスに必要とされる特性として、1. 患者の体表面に密着する、2. 治療の開始を遅らせる必要がない、3. 清潔な状態で再利用できる、の3点が挙げられるが、すべての特性を有するボーラスは現存しない。本研究では、上記1から3までのすべての機能を有するボーラスを開発すること、さらに、放射線に対する安全性を確認することで、臨床応用の実現可能性を検証することを目的とした。 【研究内容】 ・熱可塑性形状記憶ボーラスの開発 テトラメチレングリコールとε-カプロラクトンを開環重合させることで熱可塑性ポリマーを作成した。熱可塑性ポリマーをマクロモノマー化した後、化学架橋を施すことで、熱可塑性の形状記憶ボーラスを作成した。 ・形状記憶ボーラスの変形時間、密着度、線量計算精度の検証 形状記憶ボーラスの形状変形に要する時間を測定した。また、皮膚表面に対する密着度と治療計画装置における線量計算精度を評価した。 【研究成果】 形状記憶ボーラスの形状変形に要する時間は1.5分であり、治療スケジュールに影響を与えないことを確認した。また、密着度は市販のボーラスよりも大幅に改善しており、線量計算精度は市販のボーラスと同等であることを確認した。以上より、体表面に密着する、治療の開始を遅らせない、再利用可能なボーラスを開発することができた。更に、治療計画装置で正確に線量計算が実施できること、ボーラスの原料は米国食品医薬品局で認可された素材であることから、安全に臨床導入できる可能性がある。開発した形状記憶ボーラスを使用することで、患者に正確な治療を早く提供できるようになり、がんの治癒率の向上が期待できる。なお、本研究の要旨は19th AOCMP(オーストラリア、パース)で発表した。また、本研究で開発したボーラスは産業財産権の出願を行った(特願2020-63345)。
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