2019 Fiscal Year Annual Research Report
個人の色空間把握を目的とした多次元尺度構成法を用いた色知覚分析ツールの開発
Project/Area Number |
19H00501
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Principal Investigator |
比良 祥子 鹿児島大学, 理工学研究科, 技術職員
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Project Period (FY) |
2019
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Keywords | 色覚 / 個人差 / 多次元尺度構成法 |
Outline of Annual Research Achievements |
色覚には個人差があり、日本人の場合、赤緑色覚異常者は男子人口の約5%と言われている。彼らはカラフルな世界を感じており、日常生活にほとんど支障はない。しかし、一般色覚者との間には色覚のずれが生じており、本人にその自覚がない場合も多い。近年、色を用いた情報交換の機会が増えており、かつそれらは色覚の多様性が考慮されず、一般色覚者の都合で作られることも多い。色覚の異なる人々がお互いの色の見え方を理解することは非常に重要である。しかし、平成24年に発表された日本眼科医会の大規模な調査の結果では、全国657の眼科医療機関にて色覚異常と診断された人の約半数が自身の色覚異常を「気づいていなかった」と回答している。自覚が無い中高生や大学生の割合も多く、進学や就職に向き合う際のトラブルも懸念されている。したがって、プライバシーへの配慮と同時に、早い時期に自らの色の見え方を知っておくことは非常に重要である。これに対して、現在使用されている色覚検査は、いずれも色覚異常の有無や種類、強度を検査するもので、その個人がどのような色の見え方をしているのかを直接知るものではない。したがって、3色覚との色の感覚の違いを知るには別途学習するなどして理解する必要がある。申請者が所属する研究室では、色覚の個人差の研究として、対象間の関係を視覚的に分析できる多次元尺度構成法(MDS)を用いて個人の色空間を解析し、色知覚の個人差を調査した実績がある。そこで、本研究ではこの調査結果を元に、個人の色空間把握を目的とした手軽に利用できる色知覚の自己分析ツールを開発した。本ツールを使用することで、色覚異常の予備スクリーニングに加えて、その人が持つ色の感覚を視覚的に表現して提示し、色覚の認知や理解につなげることが可能となる。プロトタイプを開発した後、簡単な評価実験を実施し、実用に供する結果が得られた。2020年5月よりWebサイトで公開予定である。
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