2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19H00520
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
稲場 圭信 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (30362750)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川端 亮 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (00214677)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 宗教施設 / 減災 / 政教分離 / 災害時協力 / 災害協定 / 社会福祉協議会 / 自治体 / 災救マップ |
Outline of Annual Research Achievements |
年度内に、調査①「自治体と宗教施設・団体との災害時協力」、および調査②「社会福祉協議会と宗教団体との災害時連携」を実施した。調査①では、全国1,741自治体対象として、1,123自治体が回答(回答率64.5%)した。災害協定を締結している自治体は121、指定避難所は661宗教施設で、2014年の調査時の95自治体、272宗教施設から大幅に増加している。協定締結と協力関係を合わせると災害時における自治体と宗教施設の連携は自治体数329で、2014年の調査時の自治体数303から1割近く増加、収容避難所として指定されている宗教施設は499で、2014年の調査時の678から減少している。一方で、一時避難所として指定されている宗教施設は1,566で、2014年時の1,425から増加していることがわかった。 調査②では、全国1,826社協を対象とし、794社協が回答(回答率43.5%)した。回答があった社協のうち、これまでに災害が発生し、災害ボランティアセンターを開設したり、災害対応をしたことがあるのは321社協で全体の約4割を占めていた。その321社協のうち、災害ボランティアセンターや災害対応で、宗教団体のボランティアや支援を受け入れたのは134社協、4割であった。一方で、受け入れなかった社協は、その理由として「宗教団体から申し出がなかった」が8割、政教分離の考えからは1.9%と少なかった。 上記の2調査に加えて、災救マップ(全国の指定避難所および宗教施設あわせて30万件のデータ)を全面的にリニューアルし、アプリではなく、パソコン、タブレット端末、iPhoneやandroidのスマートフォンでもブラウザーで利用可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
8月九州豪雨、9月台風15号、10月台風19号等の大災害が連続し、当初の計画通りの調査実施が危ぶまれたが、11月から1月にかけて「自治体と宗教施設・団体との災害時協力」および「社会福祉協議会と宗教団体との災害時連携」の全国調査を実施することができた。これらの調査結果の速報は、以下のように各種メディアでも報道された。 ・「宗教施設661か所 避難所」(読売新聞(西日本):2020年4月3日朝刊) ・「阪大大学院 初の全国調査 社協、ボランティアと災害時連携 宗教団体の活動、約8割満足」(中外日報:2020年3月20日) ・「社協4割、宗教と協力 寺社の避難所 6年で倍増」(文化時報:2020年3月14日) ・「避難所不足で宗教施設に注目 自治体との災害時協定、6年前の2.7倍に」(毎日新聞:2020年3月9日)
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、①自治体と宗教施設・団体との災害時協力に関する調査に関しては、量的データを分析し、いくつかの自治体と地域および避難所指定もしくは協力関係にある宗教施設を抽出し、それらを訪問して聞き取り調査や地域特性および周辺環境の実態調査を行う。 ②社会福祉協議会と宗教団体との災害時連携に関する調査に関しては、量的データを分析し、いくつかの社会福祉協議会と地域および災害時協力があった宗教法人を抽出し、それらを訪問して聞き取り調査や地域特性および周辺環境の実態調査を行う。 これらにより、宗教施設と宗教者が社会連携する際に障壁となっている政教分離の解釈の相違の実態を質的・量的調査から明らかにし、どのような条件・環境で、宗教施設や宗教者は行政やパブリックセクターと災害時協力が可能となるのか、平常時の見守りなどで協働するのかを分析する。 ③全国の宗教施設の位置情報の精査・未来共生災害救援マップ(略称:災救マップ)の改良に関しては、ユーザによる修正依頼を促すとともに、宗教施設を回り、災救マップの位置情報と現地状況の確認をする。公共施設ではない宗教施設についての網羅的なGISデータはこれまで十分に整備されてこなかった。都道府県が管理する宗教法人名簿を活用すれば作成は可能であるものの、都道府県ごとの手続きが必要であり、名簿の時点も異なるなど課題があった。そこで、2020年度は、宗教法人・施設をより正確に特定していくために、位置情報の精度を高める方策についてサンプル地域での現地調査を行い、宗教施設の位置情報の精度を高めていくこととする。
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Research Products
(10 results)