2022 Fiscal Year Annual Research Report
Declining self-employment in Japan, revisited
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19H00592
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Research Institution | Musashi University |
Principal Investigator |
神林 龍 武蔵大学, 経済学部, 教授 (40326004)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大山 睦 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (20598825)
照山 博司 京都大学, 経済研究所, 教授 (30227532)
玄田 有史 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (90245366)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自営業 / マネジメント / プラットフォーム / 開業 / 雇用仲介 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナ感染症の流行により実施を延期した第1回「マネジメントや組織構造に関する調査(新設企業実態調査)を令和5年2月から3月にかけて実施した。その調査企業の選定に調査会社が時間を要し、データ納入が令和4年度内に完結しないことがわかり研究期間を延長し、令和5年4月に1320件についてデータが回収納入された。そのデータを用いて分析し、被調査企業についての個別レポートを作成し、希望のあった353件にフィードバックを順次開始、令和5年秋までに終了した。同調査で明らかになったことがいくつかある。まず、創業当時のマネジメントスコアの平均値は0.28、2023年のマネジメントスコアの平均値は0.33である。既存企業の分布と比較して、新規開業者のマネジメントスコアの平均値は低いが、時間が経過するにつれて全体的に向上する傾向にあった。また、マネジメントスコアと労働生産性との間で相関関係が見られないものの、取引関係に関する質問を利用して作成した取引スコアとは正の相関関係が見られる。新規開業者の組織は小さく、組織マネジメントという考え方が有用ではないという意見もあったが、実際には既存事業所と比較可能であり、かつ取引スコアを用いて事業体と事業体の関係にもマネジメントという概念を持ち込めることがわかった。 『就業構造基本調査』『労働力調査』などの政府統計を用いた分析は、研究協力者と技術補佐員の助力により相当程度進捗し、労働市場の摩擦を考慮した影響などが析出されつつある。なかでも、フォーマルセクターの労使関係の変化やその影響は、旧来の大企業正社員中心の労使関係からの広がりを示唆しており、自営業セクターが衰退した領域をカバーする傾向を見せている可能性がわかった。 職業紹介のデータを用いた分析も研究協力者の助力により進捗し、求人賃金が応募や内定、雇用にどの程度つながるかの分析が進みつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『就業構造基本調査』『労働力調査』を用いた分析は、神林教授・照山教授・玄田教授が中心となり、技術補佐員に助力を仰ぎ一定の成果が出された。とくに技術補佐員(加島遼平)から出された考察は独立した論文を構成するほど斬新だった。また、新規開業パネル調査はやはりコロナ禍の調査環境の悪化から調査開始が1年遅れている第1回新設企業実態調査を実施し、当初の計画に戻りつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、総務省『就業構造基本調査』『労働力調査』を用いた自営業セクターの担い手に関する研究を続行する。技術補佐員(加島遼平)の助力により、労働市場における摩擦を考慮した分析に拡張する予定である。事業環境を整理するために、総務省『経済センサス』経済産業省『企業活動基本調査』厚生労働省『賃金構造基本統計調査』『雇用動向調査』『労使コミュニケーション調査』などの事業所調査についても統計法に基づき利用申請する。この領域は、神林教授、玄田教授および照山教授が担当し、引き続き、研究協力者として在米の労働経済学研究者2名(Gabriel Burdin, Leeds University; Takao Kato, Colagate University)を日本に招聘し、協力をあおぐ。研究協力者は、2023年度に研究代表者の前任校である一橋大学経済研究所特任教授または一橋大学経済研究所客員研究員として招聘予定である。また、新設企業実態調査の第2回調査を年間600万円程度の費用をかけて実施する。ただし、第1回調査を令和5年2-3月に実施したことから、調査間の時間を十分とるため第2回の実施時期については慎重に検討する。同時に、第1回新設企業実態調査の内容分析を進める。この領域は、神林教授のほか、JP-MOPSの実施においてリーダーシップをとっている大山教授が担当する。同時に、神林教授が中心になり職業紹介についての分析を論文の形にまとめる。
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