2019 Fiscal Year Annual Research Report
グローバル化に伴う経済活動の産業内・産業間・空間的調整
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19H00598
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
清田 耕造 慶應義塾大学, 産業研究所(三田), 教授 (10306863)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寳多 康弘 南山大学, 経済学部, 教授 (60327137)
村田 安寧 日本大学, 経済学部, 教授 (40336508)
松浦 寿幸 慶應義塾大学, 産業研究所(三田), 准教授 (20456304)
中島 賢太郎 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (60507698)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | グローバル化 / 産業内調整 / 産業間調整 / 空間的調整 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は本研究課題の初年度であり特に先行研究のレビューとデータの構築、及び基本モデルの振る舞いを理解することに注力したが、いくつかの研究成果をあげることができた。以下、本研究課題で設定している二つの核心的な問いに関連づけて列挙する。 ■核心的な問1:グローバル化に伴う経済活動の調整は、企業・産業・地域においてどのように異なるのか 輸入競争に対する対応が企業間でどのように異なるか、特に生産品目の調整に注目した分析を行った(Bellone、Hazir、and Matsuura、2019)。対外直接投資が国内の地域雇用に及ぼす影響について、データベースの構築、および分析を行った(清田・滝沢・中島、2019)。ベトナムの企業レベルデータを用いて集積の経済性に関する実証分析を行った(Gokan、Kuroiwa、and Nakajima、2019)。 ■核心的な問2:企業・産業・地域が異質な下で、グローバル化は経済厚生にどのような影響をもたらすのか 国際間の輸出企業の生産性格差を推計する手法を開発し、その有用性を日仏の企業データで検証した(Kiyota、Matsuura、and Nesta、2019)。国内基準の国際協調に関するシンプルなモデルを構築し、国内基準に関する政策変更が地域間、あるいは多国間の国際的な基準の調和に寄与するかどうかを検証した(Takarada、Kawabata、Yanase、and Kurata、2020)。 また、2020年1月にはプロジェクトメンバーによる研究報告会”Adjustment to Globalization”を実施し、実施している各サブプロジェクトの進捗状況について議論した。この報告会では、核心的な問2の経済厚生に関連する、新財導入の厚生効果に注目した理論的な分析も報告されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
理論研究、実証研究のいずれにおいても計画通り、理論モデルの枠組み構築、およびデータ整備が進捗しており、一部の研究課題については、学会発表や学術誌の投稿を進めている。 2019年度の研究実績としては、査読付き学術誌掲載論文5本、ディスカッションペーパー5本、学会報告9件の成果があった。このため、プロジェクト1年目の2019年度は当初の計画に以上に順調に研究を進めることができていると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、上記の二つの革新的な問いに注目している。そして、これらの問いを考察していく上で、研究課題全体を統括する研究代表者(清田耕造)の下、問1に関して3つのサブテーマ、問2に関して2つのサブテーマを設定している。 2020年度は理論モデルの基本的な枠組み、および実証分析のためのデータベースの構築については2020年度の早い段階で完成させることを目指す。それぞれのサブテーマの具体的な研究計画は次の通りである。 サブテーマAは「中国からの輸入の拡大と雇用調整」である。2020年度はベースラインとなる分析を開始する。また、ベースラインの確定後は、分析の頑健性の確認を進める。 「グローバル化と製品・業種転換、高付加価値化」を扱うサブテーマBでは、途上国からの輸入品との競争に対して企業がどのように対応しているかを製品レベルのデータで分析を行う。またサブテーマC「企業の雇用調整と国境を越えた生産調整」では、2020年度は、データの整備および接続作業を進め、予備的な分析を進める。また、実際に海外移転を行った事例についての事例研究を収集する。 サブテーマDは「新財開発と厚生効果」である。ここでは近年の貿易理論の厚生効果の分析で捨象されてきた新財導入という側面に着目し、貿易利益の新しい定量化手法を開発する。サブテーマEは「各国・地域の規制制度、非貿易財産業と厚生効果」である。2019年度に構築した、企業の異質性を考慮した非貿易財産業が存在する貿易モデルの分析を深める。これと並行して、中間財部門の規制を考察できる理論モデルを構築する。
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