2019 Fiscal Year Annual Research Report
移民受入れ国-送出し国の政策相互連関――国際社会学からの比較研究
Project/Area Number |
19H00607
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
小井土 彰宏 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (60250396)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 るり 津田塾大学, 総合政策学部, 教授 (80184703)
上林 千恵子 法政大学, その他部局等, 名誉教授 (30255202)
鈴木 江理子 国士舘大学, 文学部, 教授 (80534429)
塩原 良和 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (80411693)
宣 元錫 大阪経済法科大学, アジア太平洋研究センター, 客員研究員 (10466906)
柄谷 利恵子 関西大学, 政策創造学部, 教授 (70325546)
定松 文 恵泉女学園大学, 人間社会学部, 教授 (40282892)
園部 裕子 香川大学, 経済学部, 教授 (20452667)
森 千香子 同志社大学, 社会学部, 教授 (10410755)
北川 将之 神戸女学院大学, 文学部, 教授 (00365694)
惠羅 さとみ 法政大学, 社会学部, 准教授 (10535165)
眞住 優助 金沢大学, GS教育系, 講師 (50747582)
堀井 里子 国際教養大学, 国際教養学部, 助教 (30725859)
平野 恵子 お茶の水女子大学, ジェンダー研究所, 特任リサーチフェロー (50615135)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 移民政策 / 国際社会学 / 移民受入れ / 移民送出し / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、移民受け入れ国の政策のみならず送出し国との相関という新たな視点で研究を推し進めるために、15名の研究分担者をはじめとする研究組織で問題意識を高めることを重視した。このために、7月、9月に研究会を実施したうえで、1980年代後半から受入れを開始し移民政策に関して後発的であるという点で日本と比較可能なスペインから代表的な研究者3名と世界的に著名な移民研究者を招聘し、4つのセッションからなる国際シンポジウムを11月に開催した。このシンポジウムには、約200名の人々が参加し、新出入国管理法を受けてのより定住性の高い移民の受け入れに関しての、スペインと日本の対比を中心に、多様な視点で議論がなされ、高まりつつある日本の移民政策についての関心に具体的な形で政策の総合化の必要の認識を促すことができた。他方、2019年度調査としては、小井土がアメリカ合衆国とメキシコの国境でのトランプ政権による急激な移民・難民規制の強化の影響をティファナ市をフィールドとして実施する一方、受入れのロサンゼルス市やその郊外地域での規制の強化を調査した。また、飯尾(一橋大学社会学研究科博士課程)がカリフォルニア州内陸地帯の規制により強制送還された人々の家族のその後の状況を調査した。また、恵羅・上林らはベトナムを訪問し、その技能実習生送り出し機関での訓練の実態と団体を取り巻く利害状況を調査した。平野は、インドネシアにおける家事労働者や介護人材の育成とその国内への流し込み制度回路について調査を行った。以上より、関連分野への発信と研究連携への口火を切る一方、実証的に各地域での政策相互依存の実態解明への橋頭保づくりを行った。鈴木は、日本国内の地方における新入管法以降の多文化共生に関しての政策変動について調査を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
11月に実施した国際シンポジウムでは、人文社会領域で国際的に貢献した知識人に贈られる2019年「アストゥリアス皇太子妃賞」を受賞したプリンストン大学のA. ポルテス教授を基調講演者とし、さらにスペイン社会学会の重鎮で移民政策形成をリードしてきたJ.アランゴ教授他2名の重要研究者の招聘に成功し、多数の来場者との研究交流の機会を得ることができた。スペイン側からは、今後の日本―スペイン間の研究交流の継続と今後の出版への希望を伝えられた。フィールド調査では、小井土は2019年8月アメリカーメキシコを調査し、1)アメリカ側での規制体制の変動が、トランプ初期の理解と既成組織が従来蓄積してきた政策実施の経験がすり合わされていく中で段階的に展開して来たこと、2)従来の庇護申請の枠組みが否定され、国境の南側のメキシコの複数個所の難民滞在施設で待機させられている実態、3)トランプ政権の経済的な圧力によりメキシコの左派オブラドール政権もこれに屈し、中米からの人の流れを南部国境通過点で抑制する政策に転じ、この結果として多くの難民家族が分断されている実態も見えてきた。 恵羅・上林の調査では、ベトナムでの技能実習生訓練が大規模な施設を構築して送出し以前に推進されるとともに、フィリピンでは、技能実習生の帰還者たちが再来日を果たせない結果、その技能に目を付けたオーストラリアの企業や、中国の国際的人材派遣ビジネスによってリクルートされ、中東など多様な労働現場に流出している事実がわかってきた。日本が政策的に閉じた路線を維持し、十分な送出し国の実態を把握せず二国間調整を行わないことで、実は本来日本にとって貴重な労働力が別の越境的回路に吸収されていることが確認された。平野らのインドネシア調査でも、介護労働者、家事支援労働者の選別と訓練のためのインフラが新入管法への反応の中で大規模に形成されてきている実態が明確となった。
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Strategy for Future Research Activity |
既に一部英語論文として公刊を進めてきたが、スペインとの移民政策比較は、スペイン自身が送出し国との交渉調整と国内的な地域的状況の両面をバランスを取って行っていることがわかってきており、その政策と日本の政策との対比を進めることは重要な価値を持つと考えている。スペイン研究者も出版に向けて積極的であり、コロナ問題の減少とともに協力を進め、国際雑誌での特集などの形式での英語での出版を計画している。 アメリカ合衆国に関しては、トランプ政権は退場し政策は転換基調であるが、同時にアメリカの法体系や行政機構の中に、トランプ政権が残した影響は容易には消えておらず、法の執行現場では庇護申請者の受入れを巡っての混乱は継続しており、これは定点観測の必要がある。また、メキシコ南部国境の実態の観察と聞き取りは必須と考えられる。 ベトナム、インドネシアにおける調査も、コロナ禍の受入れ抑制の中で送出し機関がいかに変動してきたかを調べる必要があるとともに、日本の受入れの遅れがこれらのアジア諸国の送り出し先の変動を読んでいる可能性があり、調査の中でこれを解明する必要がある。 コロナ禍での日本政府の移動抑制策により、国内にいる外国ルーツの人々の地位がこの2年間でどのように変わり、その結果移民労働者として定住を基盤に雇用を目指し始めているかを今後調査していく。
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[Book] ”Cultural and social division in contemporary Japan : rethinking discourses of inclusion and exclusion:Expanding exclusion: from undocumented residents into "imposter" residents"”(Eriko SUZUKI)2019
Author(s)
Yoshikazu Shiobara, Kohei Kawabata, Joel Matthews, Wooki Park-Kim, Mark Winchester, Shinnosuke Takahashi, Lawrence Yoshitaka Shimoji and Chiho Ogaya, Eriko Suzuki, Eri Ishikawa, Machiko ishikawa, Michiko Sambe, Kohei Inose, Shun Harada, Teruhiro Yamakita, Naoko Yamamoto
Total Pages
278
Publisher
Routledge
ISBN
978-1138310391
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[Book] Cultural and social division in contemporary Japan : rethinking discourses of inclusion and exclusion2019
Author(s)
Yoshikazu Shiobara, Kohei Kawabata, Joel Matthews, Wooki Park-Kim, Mark Winchester, Shinnosuke Takahashi, Lawrence Yoshitaka Shimoji and Chiho Ogaya, Eriko Suzuki, Eri Ishikawa, Machiko ishikawa, Michiko Sambe, Kohei Inose, Shun Harada, Teruhiro Yamakita, Naoko Yamamoto
Total Pages
278
Publisher
Routledge
ISBN
978-1138310391
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