2021 Fiscal Year Annual Research Report
The evolutoin of war and cooperation: comparative cognitive science on inter-group conflict and in-group cooperation
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19H00629
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 真也 京都大学, 高等研究院, 准教授 (40585767)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
徳山 奈帆子 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (60779156)
伊谷 原一 京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (70396224)
王 牧芸 東京大学, 定量生命科学研究所, 特別研究員 (70781152)
平田 聡 京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (80396225)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 集団行動 / 集団性 / 集団心理 / 重層社会 / 家畜化 / 人間性の進化 / オキシトシン / 類人猿 |
Outline of Annual Research Achievements |
戦争と協力。この「ヒトらしい」両極的な性質の進化的起源を、実証研究を通して明らかにするため、自らが提唱した「協力行動の二元起源仮説」(個体間の寛容性によって2個体間の協力行動は育まれる(ボノボ型)が、集団でまとまる協力行動は集団間の競合関係によって促進された(チンパンジー型)とする説:山本2021: Yamamoto 2020)に沿って研究を展開した。2個体間協力にかんしては、生理学的側面からアプローチするため、ボノボにオキシトシンを経鼻投与して、社会行動に与える影響を評価した。その結果、オキシトシン投与後には自己指向性反応(ストレス反応)が減少し、グルーミング(親和行動)が増加することがわかった(Brooks et al. 2022)。集団協力にかんしては、飼育チンパンジー・ボノボ集団に対して知らない個体(外集団)の音声を流すプレイバック実験をおこなった。両種ともに外集団の脅威に対して内集団の結束が高まる傾向を示したが、その反応はボノボよりもチンパンジーで強かった(チンパンジー:Brooks et al. 2021a、ボノボ:Brooks et al. in prep)。これらの種差を基に、先の「協力行動の二元起源仮説」をさらに発展させた議論を総説・意見論文としてまとめた(Brooks &Yamamoto 2022)。 ウマにかんしては、私たちが明らかにしたウマの重層社会(Maeda et al. 2021a)について、さらに行動レベルでの群内・群間相互作用を分析した(Maeda et al. 2021b)。さらに、これまでに収集したデータをまとめて、ウマ重層社会における集団構成の6年にわたる経時変化をまとめて公表した(Mendonca et al. 2022)。 これらの成果を、査読付き英文学術論文17本(研究代表者分のみ)等にまとめて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
集団性、とくに集団間競合と集団内協力をキーワードに、類人猿2種・伴侶動物2種を主対象とした統一的な比較研究を実施する研究環境を整えた。自然環境で自発的に形成される社会の研究、および飼育下での綿密な認知実験を組み合わせるという世界的にもユニークな研究である。とくに野生ボノボの研究では、1970年代からの長期調査が続く熱帯多雨林での研究(分担者の徳山奈帆子が担当)だけでなく、これまでほとんど研究がおこなわれていない乾燥林でのボノボの行動調査を軌道に乗せることができた(Onishi et al. 2020)。2020年~2022年はコロナ禍の影響を大きく受けたが、国内調査に重点をシフトさせ、海外調査についてはこれまでに収集したデータの分析をおこなうことで、研究計画全体に大きな遅れや問題は出ていない。論文執筆・公表も順調である、十分な成果をあげることができている。すでに、主要動物種4種のすべてで論文を公表できていることがその証である。種間比較にかんしても、チンパンジー・ボノボ・ウマ・イヌ・ネコのすべての種で安全に投与できる手法を確立し、直接種間比較できる研究環境も整えた。すでに実験もいくつか実施済みであり、近く論文として公表できる見込みである。種内個体間の関係性の変化だけでなく、ヒトとの種を超えた絆形成メカニズムの解明にもホルモンレベルからアプローチしている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、類人猿2種・伴侶動物2種を主対象に、自然環境下での観察研究と飼育下での実験研究を組み合わせて戦争と協力の進化について解明を進める。海外での調査も徐々に再開しはじめている。野生ボノボの調査地には、2022年度に分担者(伊谷・徳山)が渡航し、研究再開の準備をおこなった。コロナ禍で日本人が海外渡航できなかった間も、現地カウンターパートとの連携は維持されていたおかげで、最低限のデータ収集は継続できている。これらのデータ分析もこれから加速していきたい。 飼育下の研究では、私たちがこれまでに確立したオキシトシン経鼻投与の手法を用い、5種で比較研究ができる環境を整えた。集団全個体にオキシトシンを投与して社会ネットワークの変化を調べるなど、世界でも例がない最先端の研究を推進したい。また、ウマについては、高い社会的知性とともに重層社会というヒトとの共通点が見いだしてきた。このような複雑な社会でみられる彼らの集団意識というものを、観察・実験を通して明らかにする。 また、新たな展開として、ニホンザルやゾウの研究にも着手している。ニホンザルについては、コロナ禍においても国内でできる・個体情報や社会関係に関するデータの蓄積がある・餌付け群のためエサを用いた実験ができるというメリットを活かし、集団のネットワーク分析とフィールド認知実験を組み合わせるという新しい研究手法の展開を試みている。ゾウに関しては、高い知性を持つと言われながらも、彼らの認知にかんして実証的な研究がほとんどされてこなかった。野生下での観察と飼育下での実験を組み合わせ、新しいゾウ認知科学を立ち上げる。また、野生ゾウは重層社会を築くとも言われており、私たちが野生ウマを対象に開発したドローンでの研究手法を適用することで、重層社会の定量的な種間比較というこれまでにない研究の展開が見込まれる。
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Research Products
(42 results)