2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19H00631
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
寺本 渉 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 教授 (30509089)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日高 聡太 立教大学, 現代心理学部, 教授 (40581161)
白井 述 新潟大学, 人文社会科学系, 研究教授 (50554367)
北川 智利 立命館大学, BKC社系研究機構, 教授 (60336500)
安村 明 熊本大学, 大学院人文社会科学研究部(文), 准教授 (60723468)
積山 薫 京都大学, 総合生存学館, 教授 (70216539)
鳴海 拓志 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (70614353)
金山 範明 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 研究員 (90719543)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 実験心理学 / 異種感覚統合 / 身体知覚 / 身体表象 / 加齢 / ベイズ理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢期の認知機能低下への対策は,認知症とその予備群の増大,危険運転による事故多発などの社会問題を解決するためにも重要である。この認知機能低下には,感覚運動機能の低下と,それに伴う脳内の身体・運動表象(身体モデル)の歪みの関与が考えられる。高齢期の身体モデルへの理解と介入は,転倒予防等の身体運動機能改善のみならず,認知機能の維持・向上に役立つことが期待される。そこで本研究では,高齢期における身体モデルの様式とその更新プロセスをベイズ理論の枠組みを利用して明らかにすることを目的としている。また,得られた知見に基づき,高齢者の身体モデルの改善に有用な,効率的かつ効果的なバーチャル・リアリティを使った介入方法を提案する。 本年度は【A】感覚精度及び身体モデルの測定,【B】感覚入力と身体モデルの統合プロセスの解明に関する実験を進めるとともに,バーチャル・リアリティ介入実験に向けて環境設計と構築を行った。具体的には,ミラーハンド及びフット実験を実施し,身体知覚を視覚情報によって一時的にゆがめた場合には,高齢者の方が若齢者に比べてもとに戻りにくいことがわかった。また,大きさ重さ錯覚に関しては,平均値を見る限り若齢者と高齢者の間に違いはないが,高齢者においては握力が小さい参加者ほど錯覚が大きい(視覚情報に大きな重み付けを与える)など特有の特性あることがわかった。さらに,運動イメージに関する研究では,若齢者は運動イメージが不正確な参加者ほど右前頭前野の活動が大きく,それがワーキングメモリ・実行機能と強く関連していたのに対して,高齢者における運動イメージの前頭前野の活動は,ワーキングメモリ・実行機能よりもむしろ歩行機能と関連していることが示され,高齢者特有の脳活動が生じていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大により,高齢者を対象とした対面実験を進めることができなかったため,やや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって,身体知覚・認知において高齢者特有の異種感覚統合が行われていることが明らかになった。引き続き,【A】感覚精度及び身体モデルの測定,【B】感覚入力と身体モデルの統合プロセスの解明に関する実験を進めることによって,ベイズ理論の枠組みで説明できる範囲と説明できないことを明確にする。また,【C】若齢成人を対象にした人工ノイズ付加実験(疑似高齢者)によって,ベイズ理論から想定されるメカニズムに基づき,若齢成人においても時間経過とともに身体モデルが更新され,最終的には高齢者と同様の振る舞いが見られるかどうか検証を行う。さらに,バーチャル・リアリティ介入実験に向けて準備を進める。
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Research Products
(18 results)