2020 Fiscal Year Annual Research Report
身体イメージを基礎とする社会的認知過程の自由エネルギー原理による統一的理解
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19H00634
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
乾 敏郎 追手門学院大学, 心理学部, 教授 (30107015)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 健二 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (50586021)
笹岡 貴史 広島大学, 脳・こころ・感性科学研究センター, 准教授 (60367456)
朝倉 暢彦 大阪大学, 数理・データ科学教育研究センター, 特任准教授(常勤) (70308584)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 身体イメージ / 視点取得 / 内受容感覚 / 個人差 / 自由エネルギー原理 |
Outline of Annual Research Achievements |
他者視点取得(PT)に前庭器官が関与していることは明らかにされた。また人間(人形)に対しては課題と無関係に自動的に他者PTを行なっていることが示された。一方、心拍弁別感度とMESの下位概念であるPT機能の間に有意な正の相関がみられた。PT機能と内受容感覚(ITC)、共感性の間にはそれぞれ相関が見られた。以上の結果を基礎に、PT機能の新たなモデルを提案した。またITCの確信度が高い人は、中性表情をネガティブに捉える傾向も見られた。一方、Web カメラから顔のアクションユニットの位置変化を測定することにより、対象者が見ている別の人物の表情を推定することが可能であることが示された。また身体の線画の心的回転課題における反応時間の個人差と、心拍弁別課題で得られたITCの精度に関する指標との相関解析を行った結果、ITCの精度が高いほど、横臥位の身体の線画において正面像を背面像に変換するコストが小さくなることから、「振り返り」と「回転」の合成変換のような複雑な身体イメージ変換が必要な条件においてITCの精度が影響することが示唆された。さらに、被験者の脳構造画像に対してVBM解析を実施したところ、身体イメージ変換とITCの精度の個人差に小脳虫部の灰白質体積が共通して関連していることが示された。最後に、多感覚を統合した身体所有感の形成過程について検討するために、触覚刺激を用いた手法(Passive)と自己運動をともなう手法(Active)の二つを使ったラバーハンド錯覚実験をfMRI内で実施した。分析では、fMRIデコーディングを用いてフィードバックが同期条件と非同期条件とを識別することで,触覚と運動に共通する身体所有感に関わる神経基盤を検討した。その結果、右運動前野および両側の頭頂間溝において触覚条件と運動条件の間で汎化可能な身体所有感の神経活動パターンが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトは4つのグループで進めているが、いずれも当初の計画を忠実に進めており一定の成果も得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度提案した「視点取得の能動的推論モデル」を基礎に、これらの実験結果を説明できるモデルに拡張させるとともに、自由エネルギー原理を基礎に2者間の脳間共鳴を含む他者理解の統一的モデル構築を行う。また、心拍カウントや心拍弁別課題の結果を適切に解釈するための計算論的定式化を行う。心拍に対する内受容感覚の精度・確度、および実際の心拍時系列とその外部刺激フィードバックとの引き込みに基づき、各課題における自己評価を予測するモデルを構築する。さらに、心拍カウント、自己評価および脳機能計測の階層ベイズモデルによる統合解析から内受容感覚の個人差を分類する手法の開発を試みる。また内受容感覚の個人差を測定する心拍カウント課題に加えて、手の心的回転課題や文字の心的回転課題を実施し、これまでの研究で示された現象が身体イメージ変換に特異なものなのかを検証する。さらに、VBM解析によって安静時脳活動と紐付けた解析を行うことにより、課題に関連する機能的結合を明らかにし、内受容感覚の個人差の脳メカニズムを明らかにする。自己身体イメージに関しては、ラバーハンド錯覚(RHI)を用いて多感覚統合による身体イメージ形成過程の神経表象を検討した。今年度は、この身体化経験の個人差を探る。RHIでの「偽物の手の自己身体化」は基礎的な問題が多く残されている。そこで、RHI誘導中の脳活動パターンから誘導後のRHI強度を複号化し、その精度を評価する。これにより、RHI無反応者・反応者それぞれの神経表象の検討を試み、身体化経験多様性の解明を目指す。
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