2020 Fiscal Year Annual Research Report
Study of Magnetic Field Induced Electronic Phase Transitions by X-ray scattering with Pulsed Fields and XFELs
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19H00647
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野尻 浩之 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (80189399)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
桑原 慶太郎 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 教授 (90315747)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 強磁場 / X線自由電子レーザー / 電子相転移 / X線散乱 / 極端条件 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、Y系高温超伝導体の磁場誘起電子相転移の実験を2月に実施した。実験はスタンフォードのグループと共同で行ったが、現地は国内3名、他10名は国外でリモート参加となり、少人数で複雑な強磁場実験を行うことに成功した。この実験では大幅な装置の改良により、1)従来の実験より大幅に温度を下げて3.5 Kまでの低温実験を可能にした、2)バックグランドを従来の1/20以下に下げることを達成した、の2つの大きな実験上の改善が行われた。その結果、Y系高温超伝導体の磁場誘起電荷秩序において最大の問題の1つであった、電荷秩序がない状態から電荷秩序が出現するのかどうか、乱れのない系でも磁場誘起電荷秩序が存在するのかという2つの問題に対して、回答が得られた。低温、強磁場の極限において、はじめて極めて弱い電荷秩序が出現する系にあっては、零磁場では電荷秩序は観測出来ない事を明らかに出来た。これらの結果の一部は、現在論文として取り纏め中である。 グラファイトの電子相転移については、1 K冷凍機を用いたX線回折実験を継続して行い、強磁場実験を実現する上で問題となる熱サイクルによる劣化はないことを確認した。また、試料の積層の乱れによるスポットの広がりに対して、200ミクロン以下にビームを絞り込めば、十分に明瞭な回折ピークが得られることが判明した。これによって、集光ビームを持ちいて、照射場所を精密に制御することで強磁場実験が可能であることが確立した。また、実際の測定条件において、磁場誘起相転移が起こっているかを確認する電気抵抗の同時測定装置の開発も推進した。 その他、磁場発生コイルについて、試験を継続して、発生磁場の改良を進めるとともに、2層型コイルをドライブする磁場発生電源の設計、2K台の低温の生成のための装置改良、X線分光のための結晶マニピュレータの設計などを進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、2年目であるが、新型コロナウイルスのために、5月に予定されていた実験が翌年の2月に変更になるなど影響は大きかった。しかしながら、その期間に、装置の改良を集中して進める事が出来たため、従来は難しかったヘリウム温度以下の達成、バックグランドの大幅な抑制という2つの実験上の課題を克服することに繋がった。実際に、実験は遅延したものの、2月の実験ではこれまで、結論が得られなかった磁場誘起電荷秩序が磁場によって出現するのか、強度が強くなるだけなのかといった課題について回答を与える事が出来た。これは、関連研究において、非常に大きなインパクトのある結果である。また、この改良によって、これまで決定的な結果が得られなかった系において、再実験により、結論を得る目処が立ったことは大きな進捗である。その他、実験室系で行える開発や予備実験についても、順調に進めることが出来た。このように、強磁場実験の実施による結果と開発の両側面で、十分な進捗が得られており、それゆえ、研究は概ね順調に進展していると判断出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度においては、12月にスタンフォードでの実験が予定されており、新型コロナウイルスによる予定が不明確な問題はあるが、現地参加、リモート実験の両方どちらでも可能な準備を進めている。SACLAについては、2021年度後期に、グラファイトとLSCOについての実験を行い、またX線分光システムの試験実験も放射光を用いて行う事を計画している。 チェンバーのリモート操作や自動運転化についても、順次整備がなされており、3名の小数で、従来と同じ実験を可能にする整備が行われており、今後、ビームラインベースの制御系とのインターフェースの統合などにより、零磁場のチューニングはリモートで行えるように準備を行う計画である。 試料温度については、現状でも目的とする相転移を見るのには十分ではあるが、2K台の低温の達成を行う事で、より信頼性のある実験結果を得るように準備を進める。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Element-specific field-induced spin reorientation and tetracritical point in MnCr2S42021
Author(s)
Yamamoto, S: Suwa, H: Kihara, T: Nomura, T: Kotani, Y: Nakamura: Skourski, Y: Zherlitsyn, S: Prodan, L: Tsurkan, V: Nojiri, H: Loidl, A: Wosnitza, J
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Journal Title
PHYSICAL REVIEW B
Volume: 103
Pages: L020408
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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