2021 Fiscal Year Annual Research Report
Study of superconductors by laser-ARPES
Project/Area Number |
19H00651
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辛 埴 東京大学, 特別教授室, 特別教授 (00162785)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡崎 浩三 東京大学, 物性研究所, 准教授 (40372528)
近藤 猛 東京大学, 物性研究所, 准教授 (40613310)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 光電子分光 / 超伝導 / マヨラナ粒子 / スピン偏極光電子分光 / 時間分解光電子分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、全く新しい概念を持った超伝導体が出現してきた。光誘起超伝導とトポロジカル超伝導体である。前者は、超短パルスレーザー光で生成した超伝導のヒッグス粒子が観測されることにより、光誘起超伝導のメカニズムを明らかにする事が出来る。一方、後者は、極限まで微小エネルギーを計測するARPESが可能になったことにより、素粒子では発見されていないマヨラナ粒子が固体内で発見される可能性が出てきた。 本研究では、これまで築いた現有のレーザー光電子分光の装置(レーザー超高分解能極低温光電子分光装置とレーザー時間分解光電子分光装置)を有効に活用し、最大限に成果を上げるよう光誘起超伝導とトポロジカル超伝導の研究を行う。 (1)レーザー超高分解能極低温光電子分光においては、すでに発見したトポロジカル超伝導体の研究をさらに深め、ほかにも同様なトポロジカル超伝導体がないかの探索を続ける。さらに、光電子顕微鏡(PEEM)を用いて、超伝導体のメゾスコピックな電子構造の研究を始める。 (2)レーザー時間分解光電子分光においては、すでに我々は鉄系超伝導体の母物質において初めて、光誘起超伝導の兆しを発見している。これらの研究をさらに発展させ、光誘起超伝導が確実に起きているかどうかを検証するために、特に、ポンプ光の近赤外光やテラヘルツ光の開発を行い、特定のフォノンを励起できるように時間分解光電子分光装置の改造を行う。また、鉄系以外にも光誘起超伝導を起こす物質がないかどうか物質探索も更に行う。 この二つの光電子分光装置は、全国共同利用を通じて、様々な共同利用者の知恵を借り、新奇物質の開発や新奇物性の開発も行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)これまで継続的に開発を行っているレーザー超高分解能極低温光電子分光を用いて、鉄系超伝導体や超伝導体表面に存在するトポロジカル物質表面に発現するトポロジカル超伝導の研究を更に深化させた。またレーザー光電子顕微鏡(レーザーPEEM)を用いて、鉄系超伝導体におけるメゾスコピック領域の電子秩序(ネマティック相)の直接観察に成功した。 ・Discovery of mesoscopic nematicity wave in iron-based superconductors, T. Shimojima et al., Science 373, 1122 (2021) (2)レーザー時間分解光電子分光においては、世界でもまれな共同利用ができる中赤外、テラヘルツ光励起の時間分解光電子分光の開発を行い、論文リストに記載されているように、多くの研究者と時間分解光電子分光装置の様々な共同利用を行った。また自由電子レーザーを用いた研究も実施。その結果、鉄系超伝導関係物質にとどまらずナノ物質の光誘起相転移の研究にて新規物性の発見に成功した。 ・HHG-laser-based time- and angle-resolved photoemission spectroscopy of quantum materials, T. Suzuki et al., J. Electron Spectrosc. Rel. Phenom. 251, 147105 (2021) ・Ultrafast optical stress on BaFe2As2, T. Suzuki et al., Phys. Rev. Res. 3, 033222 (2021)
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、これまで築いた現有のレーザー光電子分光の装置(レーザー超高分解能極低温光電子分光装置とレーザー時間分解光電子分光装置)を有効に活用し、最大限に成果を上げるよう光誘起超伝導とトポロジカル超伝導の研究を行う予定である。 (1)行っているレーザー超高分解能極低温光電子分光は順調に成果を出しているので、このまま、更に深化させる予定である。また高い空間分解能を有するレーザー光電子分光が鉄系超伝導体の電子秩序を探るのに非常に強力なツールとなることが分かったので、この手法を用いて様々な超伝導物質の電子秩序を解明していく。 (2)レーザー時間分解光電子分光においては、世界でもまれな共同利用ができる中赤外、テラヘルツ光励起時間分解光電子分光装置を用いて、共同利用を通じて鉄系超伝導関係物質や鉄系以外の光誘起相転移の研究を引き続き行う。これには自由電子レーザーを含めた様々なプローブも駆使して進めていく。
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Research Products
(28 results)
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[Journal Article] Selective observation of surface and bulk bands in polar WTe2 by laser-based spin- and angle-resolved photoemission spectroscopy2022
Author(s)
Y.Wan, L.Wang, K.Kuroda, P. Zhang, K.Koshiishi, M. Suzuki, J. Kim, R.Noguchi, C. Bareille, K. Yaji, A. Harasawa, S. Shin, S.W. Cheong, A. Fujimori, T. Kondo
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Journal Title
Physical Review B
Volume: 105
Pages: 085421
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Multipole polaron in the devil’s staircase of CeSb2022
Author(s)
Y.Arai,K.Kuroda,T.Nomoto,Z.H.Tin,S.Sakuragi,C.Bareille,S.Akebi,K.Kurokawa,Y.Kinoshita, W.-L. Zhang, S. Shin,M.Tokunaga,H.Kitazawa,Y.Haga,H.S.Suzuki,S.Miyasaka,S.Tajima,K. Iwasa, R.Arita,T. Kondo
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Journal Title
Nature Materials
Volume: 21
Pages: 410
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Ultrafast optical stress on BaFe2As22021
Author(s)
T. Suzuki, Y.Kubota, A.Nakamura, T.Shimojima, K.Takubo, S.Ito, K.Yamamoto, S. Michimae, H.Sato, H.Hiramatsu, H.Hosono, T.Togashi, M.Yabashi, H.Wadati, I.Matsuda, S. Shin, K. Okazaki
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Journal Title
Physical Review Research
Volume: 3
Pages: 033222
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Discovery of mesoscopic nematicity wave in iron-based superconductors2021
Author(s)
T. Shimojima1, Y. Motoyui, T. Taniuchi, C. Bareille, S. Onari, H. Kontani, M. Nakajima, S. Kasahara, T. Shibauchi, Y. Matsuda, S. Shin
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Journal Title
Science
Volume: 373
Pages: 1122
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Visualization of the strain-induced topological phase transition in aquasi-one- dimensional superconductor TaSe32021
Author(s)
C. Lin, M. Ochi, R. Noguchi, K. Kuroda, M. Sakoda,A. Nomura, M. Tsubota, P. Zhang , C.Bareille, K. Kurokawa, Y, Arai, K.Kawaguchi, H.Tanaka, K.Yaji1, A. Harasawa, M. Hashimoto ,D. Lu , S. Shin , R. Arita, S. Tanda, T. Kondo
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Journal Title
Nature Materials
Volume: 20
Pages: 1093
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] 時間・スピン・角度分解光電子分光によるスピン偏極したBi(111)表面状態の観測2022
Author(s)
福島優斗, 川口海周, 黒田健太, 田中宏明, 原沢あゆみ, 飯盛拓嗣, 趙智剛, 谷峻太郎, 矢治光一郎, 辛埴, 小森文夫, 小林洋平, 近藤猛
Organizer
日本物理学会 第77回年次大会
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[Presentation] 時間角度分解光電子分光によるSmSの光誘起相転移ダイナミクス2022
Author(s)
陳奕同, 中村拓人, 渡邊浩, 鈴木剛, 任千慧, 劉珂成, 鐘益桂, 金井輝人, 板谷治郎, 辛埴, 岡﨑浩三, 井村敬一郎, 鈴木博之, 佐藤憲昭, 木村真一
Organizer
日本物理学会 第77回年次大会
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[Presentation] ARPESで解明する少数キャリア半金属CeAsの電子状態の温度依存性2022
Author(s)
新井陽介, 黒田健太, 野本拓也, 平井大悟郎, 片山和郷, 筒井智嗣, 田中宏明, 有田将史, 辛埴, 久保田正人, 芳賀芳範, 鈴木博之, 宮坂茂樹, 田島節子, 有田亮太郎, 近藤猛
Organizer
日本物理学会 第77回年次大会
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[Presentation] 極低温高分解能ARPESを用いた単結晶PdTeにおける超伝導ギャップの研究2022
Author(s)
峯明史, Zhong Yigui, Najafzadeh Sahand, 長島椿, Xian P.Yang, Tyler Cochran, Zijia Cheng, Ramakanta Chapai, Joanna Blawat, Sougata Mardanya, 辛埴, Rongying Jin, Tay-rong Chang, M. Zahid Hasan, 岡﨑浩三
Organizer
日本物理学会 第77回年次大会
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[Presentation] レーザー励起光電子顕微鏡によるBaFe2As2およびFe(Se, S)のネマティックドメインの観察2022
Author(s)
大西朝登, 影山遥一, Cedric Bareille, 谷内敏之, 石田茂之, 水上雄太, 橋本顕一郎, 永崎洋, 辛埴, 芝内孝禎
Organizer
日本物理学会 第77回年次大会
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[Presentation] ハーフメタル候補物質CoS2における巨大スピン依存電子相関2022
Author(s)
藤原弘和, 寺嶋健成, 大槻純也, 竹森那由多, D, H. O. Jeschke, 脇田高徳, 矢野佑幸, 細田渉, 片岡範行, 照屋淳志, 垣花将司, 辺土正人, 仲間隆男, 大貫惇睦, 矢治光一郎, 原沢あゆみ, 黒田健太, 辛埴, 堀場弘司, 組頭広志, 村岡祐治, 横谷尚睦
Organizer
日本物理学会 第77回年次大会
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[Presentation] 角度分解光電子分光で解明する多層型銅酸化物超伝導体の反強磁性秩序と超伝導状態の関係2022
Author(s)
黒川輝風, 大久保卓, Z. Yang, 野村肇宏, 小濱芳允, 國定聡, 酒井志朗, 関根遼太郎, 鶴川智一, 菊川樹, C. Lin, 黒田健太, T. K. Kim, M. Wattson, C. Cacho, 辛埴, 遠山貴己, 常盤和靖, 近藤猛
Organizer
日本物理学会 第77回年次大会
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[Presentation] 弾性 X 線散乱を用いた少数キャリア半金属CeAsにおける結晶場フォノン結合の研究2022
Author(s)
新井 陽介,黒田健太,筒井 智嗣,平井悟郎,片山和郷,野本拓也,辛埴,久保田正人,芳賀芳範,鈴木博之,宮坂茂樹,田島節子,有田亮太郎,近藤猛
Organizer
第35回日本放射光学会放射光科学合同シンポジウム
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[Presentation] 時間・スピン・角度分解光電子分光装置の開発とスピン偏極表表面状態の光励起ダイナミクス観測2022
Author(s)
川口海周,黒田健太,福島優人,田中宏明,原沢あゆみ,飯盛拓嗣,趙智剛,谷峻太郎,K.A. Kokh,O.E. Tereshenko,木村昭夫,矢治光一郎,辛埴,小森文夫,小林洋平,近藤 猛
Organizer
第35回日本放射光学会放射光科学合同シンポジウム
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[Presentation] 高繰り返し 1-MHz 遠紫外 10.7-eV レーザーを取り入れた時間・スピン・角度分解光電子分光装置の開発2021
Author(s)
黒田健太, 川口海周, 福島優斗, 趙智剛, 谷峻太郎, 田中宏明, 原沢あゆみ, 飯盛拓嗣, 野口亮, 矢治光一郎, 藤澤正美, 辛埴, 小森文夫, 小林洋平, 近藤猛
Organizer
日本物理学会 2021年秋季大会
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[Presentation] 時間・スピン・角度分解光電子分光によるスピン偏極電子状態の光励起ダイナミクスの観測2021
Author(s)
川口海周, 福島優斗, 黒田健太, 田中宏明, 原沢あゆみ, 飯盛拓嗣, 趙智剛, 谷峻太郎, K. A. Kokh, O. E. Tereshchenko, 木村昭夫, 矢治光一郎, 辛埴, 小森文夫, 小林洋平, 近藤猛
Organizer
日本物理学会 2021年秋季大会
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[Presentation] ARPES・非弾性X線散乱・レーザーラマン分光で研究する少数キャリア半金属CeAsの結晶場-フォノン結合2021
Author(s)
新井陽介, 黒田健太, 筒井智嗣, 平井大悟郎, 片山和郷, 野本拓也, 辛埴, 久保田正人, 芳賀芳範, 鈴木博之, 宮坂茂樹, 田島節子, 有田亮太郎, 近藤猛
Organizer
日本物理学会 2021年秋季大会
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[Presentation] 時間・スピン・角度分解電子分光による非占有電子状態の観測とチャープ調整による高時間分解能化2021
Author(s)
福島優斗, 川口海周, 黒田健太, 田中宏明, 原沢あゆみ, 飯盛拓嗣, 趙智剛, 谷峻太郎, 矢治光一郎, 笹川崇男, 辛埴, 小森文夫, 小林洋平, 近藤猛
Organizer
日本物理学会 2021年秋季大会
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[Presentation] レーザー励起光電子顕微鏡による(Ba,Na)Fe2As2のネマティックドメインの観察2021
Author(s)
影山遥一, 大西朝登, 石田浩介, Cedric Bareille, 水上雄太, 谷内敏之, 橋本顕一郎, 石田茂之, 永崎洋, 辛埴, 芝内孝禎
Organizer
日本物理学会 2021年秋季大会
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