2022 Fiscal Year Annual Research Report
Unified Understanding of Explosion and Emission Mechanisms of Gamma-Ray Bursts
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19H00693
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
長瀧 重博 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (60359643)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 裕貴 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (30434278) [Withdrawn]
高見 健太郎 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (70758002)
石井 彩子 山形大学, 理学部, 助教 (70802239)
水田 晃 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 研究員 (90402817)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ガンマ線バースト / 一般相対性理論 / 相対論的ジェット / 輻射輸送 / 重力波 / 連星中性子星合体 / 高密度状態方程式 / ブラックホール |
Outline of Annual Research Achievements |
中心エンジン:核密度を超える高密度状態において、現実的なquark-hadron crossoverな状態方程式を用いて、世界で初めて連星中性子星合体のシミュレーション、およびそこから放出される重力波の解析を行い、その特徴を捉えることに成功しました。この成果はPhysical Review Lettersにおいて "Featured in Physics" に選ばれるとともに、American Physical Society の Physics Magazine などでも紹介されました。またロングガンマ線バースト中心エンジン用に新規に3次元一般相対論的磁気流体コードの開発に取組みました。 相対論的ジェット:独自に開発していた3次元相対論的流体コードの改善を行うことにより、数値流束をHLL流束からより拡散の少ないHLLC流束に置き換えることによって、ジェット伝搬における流体不安定性がより精度よく解けました。特に接触不連続面の捕獲が重要な問題となっており、エントロピー波を考慮するHLLC流束の採用が重要であることが分かりました。 輻射輸送:我々の先行研究(Ito et al. 2019)において取り組んだ大局的な相対論的流体シミュレーションに基づいた輻射輸送計算を、10倍の光子数のもとで実行することによって、放射スペクトルの時間変動、および偏光を評価することに成功しました。本研究からは、光球面放射によって観測で知られている様々な相関関係が再現できることが明らかになりました。また、これまでの当該研究分野における業績が評価された結果、今年度は学術論文雑誌Universe誌においてガンマ線バーストの相関関係に関する招待レビュー論文を寄稿しています。 宇宙論:ガンマ線バースト宇宙論の展開となる足がかりとして、ガンマ線バーストの可視光残光とX線残光を用いた距離指標に関する論文を発表しました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
中心エンジン:より現実的なハドロン物質が徐々にクォーク物質に変化する状態方程式(quark-hadron crossover)を用いて世界で初めて連星中性子星合体シミュレーションを行いました.その結果、高密度でもハドロン物質のままとどまる状態方程式、もしくはハドロン物質が一次相転移を経てクォーク物質が突然現れる状態方程式の場合と比べて、合体後の大質量中性子星の高速回転運動を特徴付ける重力波の周波数f2に明らかな違いが現れることを突き止めました。また、それは第三世代重力波望遠鏡により検証可能であることを示唆しました。ショートガンマ線バーストの源である連星中性子星合体の数値シミュレーションに於いて、このような成果は想定しておらず、当初の計画以上に研究が進展していると言えます。 相対論的ジェットと輻射輸送:相対論的ジェットの数値シミュレーションについては既に我々のグループでは実績があり、着実に成果を挙げています。輻射輸送につきましても我々のグループは世界最先端の技術があり、結果を出しています。得られた結果はもうすぐ査読論文に投稿予定で、世界的に注目される論文となる筈です。 宇宙論:ガンマ線バーストの宇宙論については、当初の計画としては可能性を感じていたものの、具体的な実行計画はありませんでした。しかし観測されたガンマ線バースト残光の詳細解析によって、可視光残光とX線残光を用いた距離指標が得られることをMCMC法によって示すことが出来たことは、想定以上の成果でした。 ガンマ線バースト親星:ガンマ線バーストの親星である大質量星の進化末期の活動を明らかにするため、超新星噴出物が星周物質に衝突する際に光るIIn型超新星に着目してその放射機構を詳しく調べることが出来ましたのも、想定以上の成果です。
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Strategy for Future Research Activity |
中心エンジン:連星中性子合体過程から放出される重力波には複数の特徴的な振動数が含まれており、その振動数と様々な物理量との間にユニバーサルな関係が存在することやそのフィッティング式が提案されています。これは、観測される重力波から物理情報を引き出すために重要です。そこで、幾つかの特徴的な振動数の起源を調べるとともに、quark-hadron crossoverな状態方程式の場合にも既に提案されているユニバーサルな関係を満たすのかどうかを調べていきます。またこのユニバーサルな関係式と、結果として生じるショートガンマ線バーストの光度、総エネルギー等との間に相関があるかどうかを調べていきたいと考えています。このような重力波とガンマ線バーストの間の相関関係について調べられたことは前例が無く、もしこれを達成すれば世界最先端のガンマ線バースト研究となります。 相対論的ジェット:コラプサーモデルからの相対論的ジェット放出過程を3次元流体計算によってシミュレートします。これは過去に我々が発表した論文(Ito et al. 2015)の拡張に相当し、この結果を輻射輸送計算のベースとします。 輻射輸送:上記連星中性子星合体の数値シミュレーション、およびコラプサーモデルからの相対論的ジェット中でのガンマ線輻射輸送掲載を行い、ショート・ロングガンマ線バーストについて中心エンジンからガンマ線バーストまでの一連の過程を解き明かします。特に重力波とガンマ線バーストの物理量の相関については先行研究が全くなく、我々は未踏の領域に足を踏み入れ、次世代の重力波・ガンマ線バーストの研究を推進します。 ガンマ線バースト宇宙論、ガンマ線バースト親星など、計画以上に成果が出ている課題にも引き続き取り組んで行きます。
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