2019 Fiscal Year Annual Research Report
東南極沿岸での海域-陸域シームレス掘削による最終間氷期以降の氷床変動史の復元
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19H00728
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Research Institution | National Institute of Polar Research |
Principal Investigator |
菅沼 悠介 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (70431898)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
香月 興太 島根大学, 学術研究院環境システム科学系, 講師 (20423270)
田邊 優貴子 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (40550752)
板木 拓也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 研究グループ長 (30509724)
関 宰 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (30374648)
奥野 淳一 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (00376542)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 東南極氷床 / 海底堆積物 / 年代測定 / 周極深層水 / 海水準 / GIA / 表面露出年代測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終氷期における東南極氷床の最大拡大域と,その後の氷床融解過程を復元するため,東南極のトッテン氷河沖,ケープダンレー,およびリュツォホルム湾において砕氷船「しらせ」を用いた初めての本格的深海堆積物掘削を成功させた.また,インド極地研究所との国際共同研究によるシューマッハオアシスでの新開発の湖沼・浅海掘削システムを用いた浅海-湖沼堆積物掘削も実施した.これら一連の現地調査において,本研究計画の核となる新開発の地層掘削システムおよび「シームレス掘削」の多方面展開と,国際協力体制の基礎を確立することができた. また,既存の陸上岩石試料の表面露出年代測定を進め,陸域における最終氷期以降の東南極氷床融解過程の復元も進めた.その結果,リュツォホルム湾の宗谷海岸南部において,東南極氷床が約9000-6000年前の間に,400 m以上も氷床高度を減じ,急激に後退したことが明らかになった(Kawamata et al., 2020 QSR; 川又ほか,2020).このような急激な氷床高度低下・後退は,温暖水塊である周極深層水(Circumpolar deep water: CDW)の流入による氷床(棚氷)不安定性(Marine ice sheet instability)に起因している可能性がある.このため,新たに採取した深海堆積物試料について,とくにCDWの流入と氷床融解の証拠の検出にフォーカスして分析・年代測定を進めて行くこととした.本研究課題に目的と重要性について,和文でレビュー論文を発表し,広く周知を進めた(菅沼ほか,2020).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
自主開発を進めている可搬型パーカッションピストンコアラーについて,更なる改良を加えることで,当初の設定スペックを大幅に超えて,大水深(40-60m)かつ長尺(~8m)の堆積物掘削が可能となった(特許取得).そして,このコアラーを用いることで,インドとの国際共同研究である東南極シューマッハオアシスにおける湖沼・浅海堆積物掘削において,当初計画よりも大きな成果を上げることができた. 一方,砕氷船「しらせ」に初めて本格的な海底堆積物コアラーを導入し,東南極のトッテン氷河沖,ケープダンレー,およびリュツォホルム湾において深海堆積物試料の採取に成功した.また,次年度以降の浅海域での堆積物掘削を目指して,ゾディアックボートを用いた詳細海底地形マッピングを行った(Ishiwa et al., 2021 Polar Science).一方,研究遂行上,氷床融解のメカニズムの解明には陸上凍土層の掘削が不可欠であることが明らかになったため,当初予定よりスペックを変更して,大深度ボーリングマシンを購入した.
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Strategy for Future Research Activity |
大量に採取した堆積物試料の分析・解析を加速させるため,新たにGIAモデルおよび堆積物分析担当の分担者を加えた.堆積物試料はすべて高知大学海洋コアセンター(共同利用申請受理済み)の施設を利用し,全ての基礎的データの取得を一括して進める.また,岩石試料については,表面露出年代測定法を用いて順次年代測定を進め,中央ドロンニングモードランド,シューマッハオアシス,および宗谷海岸域の多地点より露出年代値を得る.そして,GIAモデルを用いて,最終間氷期以降の氷床変動について,現場データを整合的に説明する氷床融解モデルの確立を目指す.また,今年度以降に実施しする浅海域での掘削に向けた準備として,コアラーの改良や野外調査訓練を実施した.
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Research Products
(13 results)