2020 Fiscal Year Annual Research Report
ゲル材料モデリングの高度化と成長誘起形態形成の分岐座屈解析フロンティア
Project/Area Number |
19H00739
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
奥村 大 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (70362283)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 真 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90432624)
田中 展 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70550143)
伊田 翔平 滋賀県立大学, 工学部, 講師 (80610740)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 固体力学 / 材料力学 / ゲル / 高分子合成 / 不安定変形 / 膨潤 / パターン変態 / 形態形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,ゲル材料モデルの高度化と成長誘起形態形成の分岐座屈解析フロンティアの研究に取り組んでおり,本年度の研究業績は以下のようにまとめられる.まず,軟質基盤上の硬質ゲル膜に生じるパターン変態の非線形有限要素解析を行い,固体力学の分野で最も権威のある国際雑誌に論文が掲載された(Miyoshi et al., Journal of the Mechanics and Physics of Solids (2021)).この研究では,六方ディンプルパターンからヘリンボンもしくはラビリンスパターンへの発達過程において,第二分岐点では長方形チェッカーボードモードが対称性に依存して12重分岐となって生じ,六角形ハニカムに生じる座屈モードと類似した基礎モードが出現することがわかった.発達する変形パターンは実験結果と対応しており,さらなる解析によってヘリンボンやラビリンスパターンへの発達における座屈と変形の関係が明らかとなった.この発見は,現象理解のためのブレイクスルーに繋がる新しい解析手法を提案しており,今後高く評価されることが期待できる.さらに,アクリルアミドハイドロゲルに着目して,モノマーと架橋剤の量に依存した弾性と膨潤特性の評価実験を大規模に行い,両者の特性の間に成立する線形関係を発見するとともに,従来型のスケーリング理論との結びつきを検討した(Kawai et al., Soft Matter, inprint).この研究は,ハイドロゲルの有する弾性・膨潤相互作用について力学モデルを用いた広範囲で定量的な評価を実施しており,今後,ハイドロゲルの力学解析を実施する上での有用な論文になり得ると期待される.分子鎖の伸び切り限界を考慮した拡張モデルの有限要素解析ソフトへの実装も進められており,講演会発表を含めて,本研究がターゲットとする問題の研究は順調に進められている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究業績の概要に記載したように,研究課題はおおむね順調に進んでいる.例えば,論文掲載されたような,二層ゲル膜のパターン変態に関する計算力学的研究は,逐次的な座屈固有値解析という申請者らの独自性のある解析手法を用いて,機構の解明が進んでおり,今年度はより広範囲におけるこのような問題の解析結果が得られることを想定しており,論文発表の準備を進めている.また,実験的な研究においても,アニオン性のアクリルアミドハイドロゲルを用いた実験を進めており,より膨潤特性や弾性特性の広い範囲での計測が進められており,分子鎖の伸び切り限界との相互作用が量的に計測されることが期待される.さらに,二層ゲル膜の作成過程において,ゲル化時に生じるパターン変態を発見しており,新しいパターン変態の形成機構として着目して研究を進めている.また,タングル化と呼んでいるパターン発展形態について,有限要素解析のためのモデル化の試行錯誤が進められており,影響因子の定量的な解析のための準備が整いつつある.以上のことから,本研究プロジェクトは理論・計算・実験のそれぞれの側面から着実に進展しており,順調に進んでいると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として,3年目の今年度は実験サイドとしては,昨年度から進めている二層ゲル膜のパターン変態の観察と評価について,多くの知見が蓄えられているので,これらを整理して論文化することを考えている.理論サイドとして,高度化されたゲル材料モデルの有限要素解析ソフトへの実装は完了しており,これまでの実験によって取り得るパラメータ値も把握できているため,これらの点を考慮したパターン変態の有限要素解析に取り組むことを計画している.昨年度からの研究で,リンクルやクリースの有限要素解析における特有の挙動に関して,多くの知見が蓄えられており,この不安定現象に関する基礎的な研究についても論文化することを考え,これらを総合して推進することによって,ゲル材料モデルの高度化と成長誘起形態形成の分岐座屈解析フロンティアにおける研究基盤の更なる発展を図る.
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Research Products
(26 results)