2020 Fiscal Year Annual Research Report
先駆水和電子チャネル形成仮説による水中プラズマ超高速電荷移動機構の学理構築
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19H00743
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 岳彦 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (10302225)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 俊之 山形大学, 大学院理工学研究科, 准教授 (10282237)
中林 孝和 東北大学, 薬学研究科, 教授 (30311195)
小宮 敦樹 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (60371142)
宮原 高志 静岡大学, 工学部, 教授 (70239432)
上原 聡司 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (70742394) [Withdrawn]
内田 諭 東京都立大学, システムデザイン研究科, 教授 (90305417)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ストリーマ / 水和電子 / スカベンジャー / 電荷 / 水 / ポテンシャル / レーザー |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は,ストリーマチャネルで生成される水和電子の量を推定するため,気液プラズマにより生成される水和電子の定量測定法の開発を進めた.水和電子の寿命は1マイクロ秒以下と短く,瞬時における水和電子の量の測定は極めて困難であることから,スカベンジャーを用いた化学計測法を取り入れた.計測原理は,水和電子のみが反応するスカベンジャーを溶解させた水溶液を準備し,針電極を用い水面との間にプラズマを発生させた.水和電子と反応すると塩素イオンを放出する物質のため,一定時間プラズマを発生させた後,放出された塩素イオン濃度を計測した.塩素イオン数と水和電子数は等価であり,塩素イオン濃度から水和電子の定量測定が可能になった.さらに,放電電流より供給された電荷量を計測したところ,水和電子と電荷量は一定の比率になることが示された.このように令和2年度においては,世界で初めてプラズマが生成する水和電子の定量測定に成功した.一方,レーザーで水和電子を生成し,生成された水和電子を赤色光吸収法で検出することにも成功した.レーザー方式で生成した水和電子を化学計測で検出できるかどうかについても検討を進めた.さらに,平板上ストリーマ進展時のポテンシャル変化を電位計測用の電極をストリーマ進展方向に並べることで検出することに成功した.本方式は,事前に基板上に電荷を帯電させ,基板裏側に設置した電極に電荷を誘導し,ストリーマ進展時に基板上の電荷が移動しポテンシャルが消失することで,電極から接地に流れる電流を計測しポテンシャルの変化を検出するものである.本計測装置による,前駆的なポテンシャル生成の検出の検討を進めている.微量の水和電子の検出のため,細胞による検出方法も併せて開発し,電気的な刺激による特異の細胞応答が現れることを明らかにした.これらの成果により,前駆水和電子チャネルの生成の検出方法の開発が大いに進展した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度に予定していた,①水和電子の吸収測定による水和電子濃度の測定については,水和電子濃度を増大させるための試薬添加を加えた上,水和電子のみに反応するスカベンジャーを用いて,生成された化学物質の検出により定量測定に成功した.②水和電子,自発光,ストリーマの2次元同時可視化については,水中ストリーマでは水和電子濃度が低いため,レーザーによる水和電子生成を行い,透過光を利用した吸収法の適用により検出することに成功した.③不等光量位相シフト干渉法の新規開発では,濃度に対する感度だけでなく時間に対する感度を高めるための実験装置の開発を進めた.④高速微小域電位分布計測装置作製・解析では,ストリーマが進展する際のポテンシャルの時空間の変動を計測することに成功した.⑤分子動力学による電荷移動現象の数値解析では,電荷の存在による周辺分子のゆらぎについて検討を進めている.以上のことより,おおむね順調に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度には,高電界中の水和電子の生成機構の解明と水中ストリーマ進展機構の学理構築を予定しているが,それに向けて令和2年度までに開発した計測法や解析法を統合し,先駆水和電子チャネルの形成についての検証と考察を実施し,ストリーマ進展の学理構築を行う.具体的には,①レーザー法により生成された水和電子と水中ストリーマにより生成された水和電子の比較検証を行い,水和電子量の精密計測を行い,水和電子の生成量を明らかにする.②気中ストリーマのポテンシャル時空間移動計測装置を利用して,水中や水分子膜上のポテンシャル移動を明らかにし,その前駆現象について検証する.③水和電子チャネルが電界伝播を担う機構について,可視化と数値解析を統合して解明する.④電界伝播時の水和電子の挙動について数値解析を用いて解析する.
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Research Products
(15 results)