2019 Fiscal Year Annual Research Report
Complex phonon engineering including electronics and magnons
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19H00744
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塩見 淳一郎 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40451786)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大西 正人 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任助教 (30782560)
内田 健一 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 磁性・スピントロニクス材料研究拠点, グループリーダー (50633541)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フォノン / フォノンエンジニアリング / 電子 / マグノン / マルチスケール |
Outline of Annual Research Achievements |
フォノン、電子/マグノンの複合輸送系のマルチスケールシミュレーション技術の開発を進めた。まず、緩和時間近似のもとでモンテカルロ法によってボルツマン輸送方程式を直接解く手法を実践した。異なる準粒子間の相互相互作用は、一次摂動理論と第一原理から計算される散乱項によって考慮した。電子デバイスにおける非平衡高エネルギー電子(ホットエレクトロン)生成および散逸のプロセスを理解するために、短チャネルGaAsダイオードにおける電子およびフォノン輸送のシミュレーションを行った。その結果、準粒子間の強い結合により、ホットエレクトロンの過剰エネルギーのほとんどが偏向光学フォノンの散乱プロセスを介して散逸する様子が見て取れた。ドレイン端での局部的なヒートスポットの温度は、フーリエの法則の予測より50%高くなった。また、金属/絶縁体界面での電子・フォノン非平衡およびその熱輸送への影響について、AuとSiの界面の構造とその超格子構造についても解析を行った。その結果、電子・フォノン相互作用の特性長は30 nm程度であることがわかった。これは、この特性長よりも薄い金属層でAu / Si超格子を形成すれば、超低熱伝導率を達成できる可能性を示唆している。一方、マグノンについては、Atomistic Spin-Lattice Dynamics法を用いて、Fe結晶のフォノンとマグノンの準粒子特性の計算を行った。スピンと格子の結合は、位置に依存する交換関数を介して生じるとし、フォノンとマグノンの寿命とそれらの結合強度は、スペクトルエネルギー密度法を用いて抽出した。並行して、次年度に進める電子のフォノン緩和のポンプ・プローブ計測の準備を進めた。時間領域サーモリフレクタンス法の計測精度は各膜の厚さは平滑度に強く影響されることにより、電子ガンを用いた真空蒸着装置を導入し、高精度の多層膜作製ができるようにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた、フォノン、電子/マグノンの複合輸送系のマルチスケールシミュレーションの技術開発および、次年度に進める電子のフォノン緩和のポンプ・プローブ計測の準備が順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、フォノン、電子/マグノンの複合輸送系のマルチスケールシミュレーション技術の開発を進める。これまで、ナノ構造やデバイスにおける電子/マグノンの輸送と緩和およびそれに伴う発熱から、熱散逸までを複合的かつ統一的に取り扱うべく、フォノンおよび電子/マグノンの連立ボルツマン輸送方程式をモンテカルロ法により解くシミュレーションを開発してきた。この際、電子、フォノン、およびマグノンの時空間スケールのミスマッチについては、数学的なスケール分離法を検討してきたが、それに加えて、準粒子のエネルギーのごとにシミュレーションの時間ステップを変えるよりプラクティカルな手法も導入して、多準粒子モンテカルト法を完成させる。一方で、それへの入力となる緩和時間については、前年度から取り組んでいる摂動論にもとづくフェルミの黄金律やAtomistic Spin-Lattice Dynamicsのトラジェクトリを固有モードに投影する全モード分解を念頭においた手法に加えて、それらの情報をもとに実効的なモデルを作ることで、計算の高速化をはかり、上記の実際の構造やデバイスの計算を行う見通しを立てる。 並行して、前年度に準備をはじめていた電子のフォノン緩和のポンプ・プローブ計測の実験手法の開発を本格化する。本手法は従来手法である時間領域サーモリフレクタンス法を発展させたものである。基本的な原理は、ポンプ光(フェムト秒パルスレーザ)によって試料を励起し、それへの熱応答を表面に堆積した(金属)測温層の反射率の温度依存性(サーモリフレクタンス)を用いて計測するものである。従来手法においては、パルス光は測温層で吸収されて試料に到達する前にフォノンの熱に変わるため、試料内のフォノン・フォノン緩和(格子熱抵抗)を計測するのに用いられる。一方で、本手法では、測温層を透過するポンプ光を用いることで、試料に直接吸収させる。
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Research Products
(9 results)