2019 Fiscal Year Annual Research Report
Research on Recovery Behavior of Red Blood Cell with a Hundredfold Drastic Change
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19H00749
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
金子 真 名城大学, 理工学部, 教授 (70224607)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
坂田 泰史 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (00397671)
伊藤 弘明 千葉大学, 大学院理学研究院, 助教 (10783186)
高山 俊男 東京工業大学, 工学院, 准教授 (80376954)
大谷 朋仁 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (30623897)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 赤血球変形能 / 赤血球操作 / 回復時定数 / 細胞骨格 / 循環器系疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
直径6~8μmの赤血球が血管中で一番動きにくくなるのは直径5μm以下の毛細血管を通過するときである。申請者らが開発した人工毛細血管を内蔵した高速高分解能細胞操作システムを用いて、生体内では起こり得ない狭窄部で単一赤血球を静止させたところ、静止時間3分で赤血球回復時定数が100倍激変する現象を発見した。赤血球の変形特性は赤血球内部の細胞骨格の一部であるスペクトリンやアクチンとエネルギー源ATP (アデノシン三リン酸)が支配している。本研究では人工毛細血管内狭窄部ローディング中、細胞骨格やATPが時間とともにどのように変化しているのかを調べれることにより、赤血球回復時定数激変現象を解明することを目的としている。本年度は特に以下の点に着目して研究を行った。 (1)アクチン空間分布計測(ミクロ):赤血球に機械的強度を与える細胞骨格の一部であるアクチンに対して蛍光染色を行い、狭窄部で赤血球内の細胞骨格部の蛍光染色がどの程度観察できるかという予備実験を行い、次年度に向けての指針を得た。なおスピンコンター(2019年購入備品)はマイクロ流路製作に用いた。 (2)赤血球形状の3次元計測(マクロ):赤血球は厚さ2μmの円盤形状をしており、従来研究の多くは観察用オフライン高速カメラが一台設置された状態で赤血球形状を円盤回転軸方向から観察されていたため、厚さ方向の画像情報が得られなかった。厚さが変化した領域とアクチンの空間分布の相関を観察するためにも、3次元細胞観察装置が必要である。直交する二台のオフライン高速カメラを用いてマイクロ流路断面方向から観察するオフライン高速カメラによる赤血球の厚さ計測精度について調べておく必要がある。本年度は赤血球形状の3次元計測システムを試作して動作確認実験を行うとともに、粘弾性体波面観測装置(2019年購入備品)による可視化動作確認についても予備実験を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)アクチン空間分布計測(ミクロ):赤血球に機械的強度を与える細胞骨格の一部であるアクチンに対して蛍光染色を行い、狭窄部で赤血球内の細胞骨格部の蛍光染色がどの程度観察できるかという予備実験を行った。赤血球の蛍光観察は、当該グループとしてははじめての試みであったが、赤血球が狭窄部に入った際に細胞骨格の蛍光染色の観察に成功した。この項目については順調に進んでいる。 (2)赤血球形状の3次元計測(マクロ):赤血球は厚さ2μmの円盤形状をしており、従来研究の多くは観察用オフライン高速カメラが一台だけ設置された状態で赤血球形状を円盤回転軸方向から観察されていたため、赤血球が狭窄部を通過する際の挙動を正確に理解するためには、厚さ方向まで含めた赤血球形状の3次元細胞観察装置が必要である。この装置の生命線は直交する二台のオフラインカメラの光軸合わせと、マイクロ流路断面方向から観察するオフライン高速カメラによる赤血球の厚さ計測精度がどこまで上げられるかにかかる。本年度は赤血球形状の3次元計測システムを試作し、予備動作実験を繰り返し行ったが、マイクロ流路断面方向から鮮明な映像を取得するまでには至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究遂行上重要なポイントが5点ある。1点目は細胞骨格の一部であるアクチンの時空間分布計測、2点目はローディング中及び回復時間中の赤血球の3次元形状計測、3点目は力センサを用いずにビジョン情報から次元(N)を有する力情報への変換、4点目は赤血球内部のエネルギー源ATP(アデノシン三リン酸)の時空間的分布計測、5点目は、総合評価に向けた統計処理技術の構築である。今後の研究推進方策は以下の通りである。 (1)アクチンの時空間分布計測(ミクロ):2019年度に引き続き、赤血球に機械的強度を与える細胞骨格の一部であるアクチンに対して蛍光染色を行い、赤血球内部構造の変化について調べる(2020-2022年度)。2020年度は特に、マイクロ流路内でのサンプル赤血球操作方法まで踏み込んで考察する。 (2)赤血球形状の3次元計測(マクロ):2019年度の計測システム設計、試作、及び予備実験結果を踏まえて計測システムを改良し、厚さ2μmの赤血球を円盤回転軸方向から観察した2次元形状に流路軸方向から観察した断面形状を盛り込み、赤血球の3次元形状観察を目指す(2020-2021年度)。 (3)力センサを用いずにビジョン情報だけで力の次元(N)を取り込む方法について考察する(2020-2021年度)。 (4)赤血球内部のエネルギー源ATP(アデノシン三リン酸)の時空間的分布計測(2021-2022年度)。 (5)循環器系疾患者の赤血球変形能まで踏まえて総合的に統計処理を行う(2022年度)。
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Research Products
(10 results)