2021 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of millennium inundation of flood water and debris from the viewpoint of time-related disaster prevention study integrated by geotechnical history and disaster tradition
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19H00785
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
鈴木 素之 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (00304494)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田口 岳志 秋田大学, 理工学研究科, 助教 (00452839)
楮原 京子 山口大学, 教育学部, 准教授 (10510232)
川島 尚宗 広島大学, 総合博物館, 准教授 (10650674)
長井 正彦 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (20401309)
赤松 良久 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (30448584)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 土砂・洪水氾濫 / 土石流 / 年代測定 / 発生頻度 / リスク評価 / 歴史資料 / 遺跡 / リモートセンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、地質による土砂・洪水氾濫状況の違いを検討するため、後背地に花崗岩以外の地質が分布する地域として、広島市黒瀬地区(白亜紀流紋岩)および山口県防府市富海地区周辺(トリアス紀~ジュラ紀変成岩)を選定し、過去の土石流・洪水堆積物調査を実施した。富海地区については、発生場の地形的条件の違いを検討するため、現地調査に加えて高精細地形データを用いた地形解析を実施した。また、広島県東広島市および山口県周南市・防府市における遺跡分布と災害の関連について検討した。その結果、流紋岩地帯の土石流発生頻度は、年代誤差はあるものの、おおよそ100~300年であり、花崗岩地帯の150~400年と大差ないようであること、メッシュサイズ2mの細密DEMは地形を詳細に捉えられるものの、谷地形の抽出には基盤地図情報から得られるより大きいメッシュサイズのDEMが適していること、対象地域においては、土砂災害リスクが高いものの、周知の遺跡の分布が稀であることを示した。 次に、秋田県雄物川流域の大仙市九升田、刈和野および大曲の3地区でジオスライサーによる洪水堆積物調査を実施した。その結果、各コアで確認された複数の逆級化層は洪水をうかがわせる痕跡であること、九升田と刈和野地区の年代値は古文書の災害記録に近接していること、また、大曲地区の年代値は強首・大平山沢地区とほぼ同じ1450年前後であったこと(広域的な洪水痕跡として捉えられる可能性が出てきたこと)を示した。その他、古文書『西仙北町史深浦文書』を解読し、この地域では1700年代に洪水が繰り返し発生していたと推察した。 この他に、2018年に発生した広島県呉市の土砂災害を対象に、山間部の地表の変化検出を行うとともに、ALOS-2(SAR衛星)を用いて差分干渉SAR解析(DInSAR)を実施し、被災地の検出を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度の現地調査に関しては、山口、広島、秋田の各県の調査エリアで実施し、データの積み上げを行うことができた。山口、広島両県においては、花崗岩以外の地質からなるエリアにおける過去の土石流・洪水氾濫の発生履歴および土砂・洪水氾濫の発生場の地形的条件に関するデータが蓄積されつつあり、異なる地質帯のこれらの発生頻度の解明の端緒が開かれた。特に、変成岩地域では、地表勾配の緩やかさに比べて、地表直下で礫質な堆積物にあたることが多く、花崗岩地域との違いがみられた。一方、秋田県においては、雄物川流域の洪水堆積物のサンプリングと年代測定データが蓄積されつつあり、未知の大規模な洪水の発生をうかがわせる知見が得られた。なお、当該年度も、宮城県の調査エリアについては、時期と状況が合わず、次年度に見送ることにした。 地形解析に関しては、花崗岩と変成岩が分布するエリアの基本的なGIS地形解析が完了した。土砂・洪水氾濫のリスク評価を目的として、風化脆弱な地質を特定したうえで、数値地形データから土砂供給ポテンシャルを算出する手法の検討に進んだ。 遺跡分布と災害の関係に関しては、当該年度の調査エリアでは、土砂災害リスクの高い地域における遺跡分布は希薄であった。これまで検討してきた山口県防府市佐波川流域における状況とは異なっており、未検出の遺跡の存在について考慮する必要があると考えられる。近隣の中世城館跡の分布や旧山陽道の存在から、調査地周辺において少なくとも中世の集落跡の存在は予測される。 リモートセンシング解析に関しては、長期間のALOS-2データを用いて、干渉SAR解析によるコヒーレンス値から地表面変化を検出する手法が確立した。 以上、当該年度もコロナ禍の様々な制約を受けた調査研究となったが、感染防止対策を講じた調査研究とWEBによる研究打合せにより、おおむね順調に研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策を以下にまとめる。 ①花崗岩以外の地質(変成岩や流紋岩)が分布する地域のデータを充実させると共に、これまでのデータに基づき、土砂災害・洪水災害の地域性を把握することに努める。これら地質帯において年代測定試料を採取できる確率の高いエリアを探索し、ジオスライサー調査および露頭観察を追加実施し、得られた結果は土砂・洪水氾濫年表として整理する。②既往災害を含めて調査結果を精査し、その結果をもとに土砂・洪水氾濫が発生しうる地質、地形、土地利用等の条件を見極める。③遺跡情報の多い地域を中心に地質調査を行うほか、調査歴のある遺跡において土砂災害の痕跡を抽出することによって、居住位置と被災リスクの関連についてさらに検討を進める。④衛星データから作成した各調査エリアの細密DEMおよび基盤地図情報が提供するDEMを用いてGIS地形解析を進めるとともに、土砂供給ポテンシャルを算定する地形指標を検討する。⑤既調査渓流の細密DEMを用いて土石流の数値解析シミュレーションを実施し、その影響範囲・堆積厚等を調べる。また、その結果を現地調査結果と比較する。⑥差分干渉SAR解析の結果の検証を実施すると同時に、砂防ダムや斜面の傾斜等との関連性を検討する。
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Research Products
(18 results)