2019 Fiscal Year Annual Research Report
Research on thermal comfort evaluation method considering diversity
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19H00797
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田邉 新一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (30188362)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
對馬 聖菜 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (10801251)
尾方 壮行 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員 (90778002)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 温熱環境 / 熱的快適性 / 人体熱モデル / 生理量 / 心理量 / 代謝量 / 発汗サーマルマネキン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、人体を取り巻く様々な温熱環境に対する温熱快適性評価や健康性評価を行うことを目的としており、2019年度は主に以下の3課題に取り組んだ。 1)代謝量測定実験 夏季と冬季に被験者45名を対象とし、異なる5つの活動レベルに対する代謝量を測定した。全被験者の平均測定値は、現在の熱的快適性評価において広く用いられるISO8996の基準値と比較し、いずれの活動量においても低い値であった。さらに、女性の安静時の代謝量は男性に比べ低いことが明らかになった。これらの実験結果は日本人の熱的快適性を正確に評価する上で極めて重要なデータである。 2)着衣透湿指数の計測 夏季屋外環境のような、発汗しやすく、気流のある環境下でのシミュレータの予測精度の向上を目的として、人体の発汗を模擬するサーマルマネキンを用いて、風向・風速別の部位別着衣透湿係数を測定した。これらの測定データをモデルの入力条件とすることで、部位ごとの着衣の素材の違いや重ね着の状態を再現することが可能となった。 3)個人差の影響を考慮した人体生理予測シミュレータの開発 我々がこれまでに開発した体温調節モデルJOS-2を基に、新たな生理量予測シミュレータJOS-3を開発した。プログラムには、高齢化による体温調節機能の鈍化などが追加されており、個人差の影響を考慮した生理量予測が可能である。また、モデルの適用範囲を拡張させるため、屋外日射の影響も加味している。さらに、JOS-3はPython3を用いてモジュール化されているため、既存の様々なデータ分析プログラムとの互換性も高く、研究者や設計者がこのモデルをツールとして簡便に使用することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
4年間の研究計画において、研究前半の2年間は主にモデルの条件整理や被験者実験などを行い、後半の2年間はシミュレータの開発や応用を行う予定であった。 モデルの条件整理や被験者実験に関して、2019年度は代謝量と着衣に関する実験を行い、学会発表や査読論文を執筆し、年次計画通りに研究が遂行されている。代謝量に関する研究は、2020年度日本建築学会やRoomvent2020にて発表予定である。着衣に関する研究は、2019年度に日本建築学会、空気調和・衛生工学会、ISES ISIAQ2019にて発表し、すでに日本建築学会環境系論文集やJapan Architectural Reviewなどの論文誌に掲載されている。 シミュレータの開発や応用に関しては、4年間の研究計画の中で主に後半2年間で行う予定であったため、2019年度はモデル開発の準備の年として位置づけていた。しかしすでに、新たな生理量予測シミュレータJOS-3を開発し、論文誌Energy and Buildingsに投稿しており、当初の計画以上に進展している。 したがって、総合的な研究の進捗状況として、(1)当初の計画以上に進展しているという評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は体温調節モデルを基盤とした温冷感・快不快感予測、血圧予測、熱中症予測手法の確立を目指し、以下の3課題を中心に研究を進める。 1)個人差に関するデータに関する文献調査、および昨年度実施した代謝量測定実験のデータ分析を行なう。昨年度の代謝量測定実験により、代謝量の性別差、季節差が確認された。今後はは、代謝量差が現れる要因、代謝量差が快適性に及ぼす影響に関しても分析を進める。また、年齢、性別、身長、体重から個人の代謝量を推定する方法についても検討する。 2)被験者実験データベースの構築 被験者実験データベースを構築し、モデルの精度検証用の比較データとして用いる。近年、倫理委員会などへの対応で新たな被験者実験の実施が難しくなってきたことから、我々の研究グループで行われてきた被験者実験や、今後新たに実施する被験者実験、また他研究グループによる既往の被験者実験を基に、人体生理量や心理量に関する実験データベースを構築する。モデルの精度検証用の比較データとして用いる。また、データベースを広く公開することで、第三者へのデータ提供を可能にする。 3)新たな温熱快適性シミュレータ(TAT)の開発 体温調節モデルを基盤とした温冷感・快不快感予測、血圧予測、熱中症予測手法の確立を行う。Pythonなどを用いたプログラム開発によって上の予測手法を統合した、「温熱快適性・健康性評価数値シミュレータ(TAT)」を開発する。シミュレータの精度検証を行うため、データベース中の実験再現を行い、実験値とシミュレータの予測値を比較する。実験値と予測値の間に乖離が見られる場合は原因を分析し、シミュレータの改良を行う。
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Research Products
(13 results)