2020 Fiscal Year Annual Research Report
SiCセラミックスラスタに高い靱性を付与するハイパー・コンパージド技術
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19H00799
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
岸本 弘立 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (30397533)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴山 環樹 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10241564)
芹澤 久 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (20294134)
中里 直史 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 助教 (70714864)
中田 大将 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 助教 (90571969)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | SiC/SiC複合材料 / NITE法 / RS法 / PIP法 / スラスター / 燃焼試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
スラスタ燃焼システムの製作を行った。推進剤はガス水素とガス酸素を用い、断熱火炎温度およびスロート部での静温が1700℃程度となる条件として、酸素/燃料の質量混合比を1.0-2.0程度と想定した。この条件では燃焼室の内壁に生じる軸応力が複合材料の積層方向の層間破壊応力を下まわることから、スロート径をφ4㎜、スラスタの肉厚を2㎜、フランジの取り付け穴数は8とした。テスト用要素部材はクロスプライ構造の繊維構造を有するSiC/SiCブロックよりフランジ及び燃焼室の形状を模擬した形状を削り出して製作した。 SiC/SiCセグメントの統合技術として、NITE法SiC/SiC上にPIP法、RS法により複合材料を成型する技術検討を行った。PIP法はPCSスラリにSiC粉末を添加し、SiC繊維に含侵して温度1200 ℃、無加圧、時間1hで焼成した。SiC粉末の比率と複合材料の密度には相関があり、50%程度の粉末添加量が最も高い密度を得られた。一方でNITE材との接合界面は可能であるものの脆弱で、成型法としては有望なものの、接合手段としては他の手法が必要である。RS法については予備検討を行った。C粉末とSiC粉末をマトリックスの骨材とし炭素被覆を有するSiC繊維を配置した後、金属Siを入れて温度1450℃、時間2時間で熱処理を行った。当初C/Siの比率は焼成後にSiCとなる化学量論組成で作製したが、Siの消耗が激しいため過剰にSiを投入することで複合材料が製作可能であった。靭性を確保する繊維の炭素被覆がSiとの反応により焼失する傾向がある一方、基盤となるNITE材との接合力は極めて強い。導入したドライSD30検出ユニットを用いた分析の結果Alが観察され、また接合部はSiリッチと思われ、これらの可能な限りのSiC化が課題として見いだされたものの、RS法はNITE法材料の接合技術として有望である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
製作したスラスタ燃焼システムの燃焼条件検討において、燃焼室の内壁の軸応力が1MPa以下と積層方向の層間破壊応力を大きく下まわる計算結果となった。NITE法SiC/SiC複合材料は基本的に高密度でねじ切りが可能であり、ねじ山まで強化繊維が入っているので、削り出した場合でもスロート部が破壊されない可能性がある。この削り出し材は2年目の本年度はテスト用要素部材として準備したが、初年度の課題であったフランジ形成法と高温にさらされかつ燃焼生成物と接触する燃焼室内壁の接合部形成の回避法は、フランジからスロート部まで一体で製作し、これに疑似HIP法かPIP法で製作した縦方向強化材を兼ねたセグメントを接合し、さらに周方向に強化材を入れて固めるという方向性を見出すことができた。 そのためには無加圧下で固める方法を見出さねばならないが、本年度のRS法の検討から、無加圧下でSiC部材間で強固な接合力の接合部を得たり、また既成のNITE材に強化繊維を追加して一体化したNITE/RSハイブリッドSiC/SiC複合材料製作も可能と考えられる。上記のフランジ・燃焼室一体のNITE製パーツを芯材に複合材料の部品を追加することが可能であり、この方式だと少なくともスロート部の外までは弱点である残留C、残留Siは燃焼生成物質には触れない。ただしRS法で製作した場合は繊維の炭素被覆が損傷するために靭性は低いと思われ、同じく無加圧で複合材料の「形」を製作できるPIP法との併用の可能性を探らねばならない。特にスロート部を出た後のスカート部の処理法は検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目の実施計画は、1)スラスタ燃焼システムにおけるテスト用要素部材を用いた燃焼試験により、燃焼試験中の温度変化データの取得、燃焼条件とテスト用要素部材破壊・損傷状況のデータを得て、セグメントによる強化方向の決定を行う。2)PIP法およびRS法を併用するコーン部形成技術の探求、3)RS法によるセグメント接合技術の探求、とおこなって基礎的なデータを積み上げるとともに 4)習作となるSiC/SiCスラスタの製作を試みる。 スラスタ製作に向けたRS法とPIP法は現時点ではプロセス条件も確立しておらず、成型するための道具の準備とプロセス条件と強度特性の相関データ取得は必要であり、燃焼生成物との共存性やハイブリットSiC/SiC複合材料の耐熱性を考えると、微細組織評価と化学組成分析データが重要となる。RS法による接合も複雑形状のセグメント間を埋める必要があるため技術検討が必要である。本研究の目標はスラスタの製作であるため、4)の習作の製作は、性能を度外視してまずは形を作る統合プロセス活動である。統合プロセスでは、部材ごとのプロセス検討だけでは見落とす細かな問題や、あるいは短時間では解決不可能な致命的な問題が必ず露わになるはずである。最終年度にはそれらの問題を解決して目標を達成する予定である。
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Research Products
(1 results)