2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19H00827
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
石本 卓也 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (50508835)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中野 貴由 大阪大学, 工学研究科, 教授 (30243182)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ひずみ遮蔽 / ひずみセンサー細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨劣化を生じない新骨機能化インプラントロジー構築のため、初年度は、「骨劣化」の本質を材料学的観点から明らかにするための研究を実施した。具体的には、ひずみ遮蔽を生じないインプラントが実現されていない要因の1つが、ひずみ遮蔽を本質的に検知する手段が十分でないことにあると考え、従来の骨評価指標である骨密度に加えて、骨の力学機能特性を支配することがこれまでの研究で明らかとなっている、骨基質構成材料であるコラーゲンとアパタイトの優先配向性を基準として骨を解析し、併せて実施した力学的評価に基づき、ひずみ遮蔽での骨劣化を明らかにした。すなわち、骨の劣化が、コラーゲン/アパタイト配向性で定義可能であることを見出し、配向性をターゲットとしたインプラントの仕様策定が肝要であることを示すことができた。 具体的には、ひずみ遮蔽が生じることが明らかになっている、従来型の金属インプラントを骨に埋入した際のひずみ遮蔽の表現型について、実験動物を用いた埋入試験により解明した。ひずみ遮蔽による微細構造・機能の劣化を見出した。さらには、インプラント埋入によるひずみ遮蔽以外の影響の有無の検討のため、インプラント非埋入での骨への除荷(免荷)によるひずみ負荷低減モデルも作製した。 さらに、ひずみ遮蔽の発生から骨劣化を生じるまでの生体内機序に深く関与する因子として、ひずみセンサー細胞と細胞内での流体流動の関与を想定していることから、ひずみと流体流動の関連を明らかにするための計算機実験の実施に向けて、ひずみセンサー細胞の構造の可視化に着手した。 また、新たなインプラント用素材の創製に向け、新合金系の検討にも着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に則り、順調に進捗している。特に、材料学的観点から骨劣化の状況を明らかにし、ひずみ遮蔽によって、良く知られた骨量の現象に加えて、骨微細構造と材質としての機能の低下が生じ、骨全体として、従来基準での判定よりも重篤な機能劣化が生じていることを示すことができた。これにより、骨量に加えて、材質の観点からインプラント創製を再考することの必要性を示すことができ、本研究遂行の道筋がより明確となった。
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Strategy for Future Research Activity |
骨劣化を生じない新骨機能化インプラントロジー構築のための重要な事項として、(a) ひずみの直接測定もしくは有限要素法によるひずみ遮蔽の定量化、(b) ひずみ感受を担うとされるひずみセンサー細胞の機能の理解(形態学的観点と生物学的観点(遺伝子やタンパク質の関与))、(c) 新規インプラント創成のための素材開発、を基軸として進める計画である。特に、生物学的観点での機序解明には、当初計画していたELISAやPCRに加えて、次世代シーケンシング法により、遺伝子情報を網羅的に解析することで、候補因子の絞り込みを行う。
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