2019 Fiscal Year Annual Research Report
全無機細孔構造結晶の金属酸化物合成展開による新触媒機能創出
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19H00843
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
上田 渉 神奈川大学, 工学部, 教授 (20143654)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
定金 正洋 広島大学, 工学研究科, 教授 (10342792)
鎌田 慶吾 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (40451801)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 触媒化学 / 固体物質化学 / 物質合成化学 / 結晶構造 / 細孔構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
望む触媒反応に合わせて至適な触媒機能を持つ元素ユニットやリンカーを個別選択し、その単位が維持される状態で細孔性ユニットネットワーク型結晶構造に転換することにより、極めて有効な触媒作用結晶場を有する新たな固体触媒を創出することが可能になる。本研究では、これを実証するとともに、触媒機能設計性と物質展開拡張性のある細孔性ユニットネットワーク型結晶物質合成方法論の確立を目指す。対象とする触媒反応は、近年触媒反応ターゲットとして注目される小分子の活性化と触媒反応、すなわちメタン酸化、二酸化炭素の還元、水の酸化による酸素発生などを検討し、従来の触媒を凌駕するこれら小分子の触媒的転換反応を実現する。本年度の研究では、小分子としてアンモニアと一酸化窒素の反応(NH3-SCR)をターゲットとし、この反応に必要な触媒構成元素であるタングステンとバナジウム、さらにはチタンを対象とし、基本ユニットに酸化タングステンキュバンを選び、これをバナジル(+チタニル)リンカーで連結、ネットワーク化したミクロ細孔性結晶物質形成の方法論を展開した。 今年度の研究では、広い範囲の合成条件検討を進め、ユニットネットワーク結晶形成の過程を追求し、合成プロセスの簡略化、収率向上、結晶性向上を図ることができた。その過程で、酸化タングステンキュバンからなる新しい結晶性物質の合成に成功した。構造解析は進行中である。また、キュバン部位に他の元素の導入やリンカー部位でのバナジルをチタニルで部分置換することに成功した。これらの研究によりユニット配置による新規構造形成可能性とユニットやリンカーの元素拡張性を明確にすることができた。さらには、これらの構造化と構成元素拡張により、NH3-SCR反応に対する触媒性能に大きな変化が現れることを見出し、触媒作用に対する構造因子と導入元素因子の両面が明確になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績概要で記載の通り、当初初年度の目的とした、細孔性ユニットネットワーク型結晶物質形成論に内在するユニットネットワーク形成の自由度と多様性を制御する化学の導入を進める研究について、実際の物質合成方法検討からの実績は着実に進めることができ、新しい物質合成は容易でない中、達成でき、元素展開も可能となったことから、研究は極めて順調に進捗したと判断できる。しかし、同時に初年度目標として、以上の研究と並行して、設定されたユニットとリンカーの計算科学的に得られる安定性と反応性の指標をもとに、ユニットとリンカーからなるサブユニットを構築し、ついでサブユニットをベースに様々な3D構造形成を導き、その構造の安定性をさらに計算科学的に求め、望む構造形成を誘導する方法を展開することを予定していたが、そのための研究環境を整備するに留まった。
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Strategy for Future Research Activity |
以下の研究を積極展開する。 1。 ユニットネットワーク構造は必ずしも構造安定ではなく、合成過程で添加した有機構造安定化物質が取り込まれていて、結晶構造解析を難しくしている。さらなる合成検討を進めることにより、構造解析を簡単化する方法論と同時に、構造安定性が低い物質であっても構造解析できる方法論を積極展開する。 2。 物質形成が可能なだけ十分な安定性を有する細孔性ユニットネットワーク型結晶の候補を計算科学的に挙げる。すなわち、様々なユニットの候補を最初に挙げ、これらのユニットとリンカーの連結から得られる様々な細孔性ユニットネットワーク型構造の可能性を列挙し、その3D構造安定性の指標を計算科学的に得る。これをもとに実合成対象を決定し、合成プロセスを進める。 3。 実合成についてはまだまだ検討しなくてはならない影響因子が存在する。そのため、合成条件検討(元素の酸化還元状態の制御、元素濃度と酸濃度、有機・無機添加物濃度、水熱・ソルボサーマル・還流下、撹拌等の条件検討)を広く実施する。 4。 研究分担者と共同して、小分子活性化の触媒化学を展開する。
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Research Products
(10 results)