2020 Fiscal Year Annual Research Report
Detection method for 10-100nm nanofluidic engineering and application to single cell proteomics
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19H00850
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
馬渡 和真 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (60415974)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ナノ流路 / 光回折 / 溶液物性 / 可算個分子 / 光らない分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は昨年度新規に開発した光熱変換光回折(POD)法を最適化した。最初に設計法を構築した。温度分布、屈折率分布を求め、当該屈折率による可視光の光回折強度変化を従来の光回折理論によりモデル化して、数値計算により求めた。ここで最も重要な点は、さまざまな溶液物性が変化するナノ流路での屈折率変化である。最初に、溶液変化がこれまで観測されていない有機溶媒を用いて理論と実験結果を比較したところ、構築した光回折理論の値と一致した。すなわち、ナノ流路においても従来の光回折理論で説明できることがわかった。そして、溶媒物性が変化する水を導入して屈折率を測定したところ、ほぼ理論と一致することがわかり、光周波数領域では屈折率はバルクの屈折率を使用できるという重要な知見も得た。水分子の並進運動など低周波数領域では屈折率が変化するが、電子が関与する光周波数領域では変化しないことを意味しており、従来の結果と矛盾しない結果となった。 次に、POD測定系の設計法を確立した。本理論を用いて、ビーム径や検出回折角、検出位置を最適化した。また、熱拡散係数や屈折率温度係数が異なるさまざま有機溶媒で感度を比較して、溶媒により増強効果があることを確認した。そして、最適条件として、色素溶液(アセトニトリル)で実験したところ、光照射領域に7分子存在する条件で検出できることがわかった。すなわち、アットリットルの微小空間で、光らない分子を可算個レベルで検出することにはじめて成功した。 最後に、プロテオミクスへのプラットフォームとして、世界最小サイズでのクロマトグラフィ集積化に着手した。70nmの流路を用いてインジェクションと分離のための流路を設計した。そして、実際に定量インジェクションできることを確認した。次年度は実際にクロマトグラフィでの極限空間クロマトグラフィに挑戦する。 以上、本年の目標を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目標である検出系の最適化について、理論解析系を構築して、実験結果との比較からこの系が有効であることを実証した。また、この理論解析系を用いて光学系を最適化して、実際にナノ流路で可算個分子の検出をはじめて実現した。本検出系はナノ流路などの極微小空間で光らない分子を検出できる唯一の検出系である。濃度が濃くてナノ流路では微小体積のために分子数は可算個領域となる。したがって、本検出系はナノ流体工学のツールとして不可欠である。さらに、クロマトグラフィへの応用についても、流路デザイン、定量インジェクションを実現することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本検出法とナノ流体クロマトグラフィを組み合わせて、物質の高効率分離分析に応用する。また、本検出法の応用範囲を探索する。
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