2020 Fiscal Year Annual Research Report
Characterization and control of spin dynamics by spin-resonance scanning tunneling microscopy
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19H00859
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長谷川 幸雄 東京大学, 物性研究所, 教授 (80252493)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 / スピン偏極トンネリング / 強磁性共鳴 / ナノサイズ磁性体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、走査トンネル顕微鏡(STM)の探針に高周波ケーブルを導入することにより、探針試料間への高周波信号を導入している。この構成における高周波電場・磁場の分布を計算で求めるとともに、この高周波磁場による探針下のナノサイズアイランド構造の共鳴条件をLLG方程式により見積もり、共鳴検出に最適な測定条件等を決定することができた。さらに高周波導入構成や関連する計測機器を制御しつつSTM測定を行うシステムの構築を推進することで、ナノサイズアイランドの磁化曲線測定や探針試料間での高周波電場の周波数特性の均一化など様々なプロセスを自動化するなど、種々の操作を効率良くリモートでも行えるよう整備を進めた。また従来の測定では、高周波による試料磁化の変調をトンネル電流値で測定していたが、磁化の変化によりより敏感に変動することが期待できる微分トンネル伝導度の値から測定することができるようにも構築し、磁化変調検出の高感度化を進めた。 上記の装置を用いて、面直磁化を持つことが知られるタングステン基板上の2原子層鉄磁性アイランド構造上での測定を行った。十分に小さなアイランド構造を選択することにより保磁力が小さく共鳴周波数が低い試料が得られるものと予測されたものの、現在までのところ、我々が対応できる周波数範囲では明確な強磁性共鳴信号を得ることは出来ていない。ただ、高周波照射により反転磁場が減少するマイクロ波アシスト磁化反転現象を捉えることに成功しており、その周波数依存性・強度依存性などの測定を進め、そのメカニズム解明に全力を挙げている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既存装置に対する高周波の導入やそれに伴う機器や測定系の整備は順調に進んでいる。強磁性共鳴自体は検出されていないものの、十分な強度の高周波が導入されていることなどはマイクロ波アシスト磁化反転の検出等で検証されており、今後適切な系を選択することにより、実現されるものと考えている。またコロナのために来日が遅れていた博士研究員も着任しプロジェクトに参画していることから、予定通り順調に研究計画は進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
銅基板上のコバルト2原子層アイランド構造など保磁力の小さな系を選択し、ナノサイズ磁性体アイランド構造におけるスピン共鳴信号の検出を実現するとともに、そのサイズ依存性やスピン緩和プロセスの評価、さらには共鳴により誘起されるスピン流計測の実現を進めていく。また、マイクロ波アシスト磁化反転現象に関しても、その周波数依存性・強度依存性・アイランドサイズ依存性などの測定を進め、そのメカニズム解明を実現する。
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Research Products
(13 results)