2019 Fiscal Year Annual Research Report
マグノニック機能創発のための電圧効果と凝縮効果の研究
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19H00861
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
関口 康爾 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (00525579)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立崎 武弘 東海大学, 工学部, 講師 (20632590)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | スピン波 / マグノン |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、マグノニック機能の一つとしてマグノン伝搬に対する熱勾配効果を探求した。半導体CMOS等とのハイブリッド素子で発生する熱を活用することを想定した。磁性絶縁体のマグノン媒体に局所的に熱を印加することで熱勾配を作製し、マグノン伝搬特性をネットワークアナライザーで測定した。微少ではあるが、熱勾配によるマグノン媒体の不均一磁化構造によってマグノン伝搬方向が変調される効果が確認でき、ハイブリッド構造への足がかりを構築することができた。一方、マグノニック結晶をつかったスピン波伝搬制御に関して、ダブル・メアンダ構造を取り入れることで、周期的な磁場構造によって伝搬スピン波パケットが60%以上の減衰を示すことを検出した。これはスピン波入出力を電気制御することに成功したことに対応する。マグノン制御の電圧効果に関して、垂直磁気異方性を有するコバルト(Co)超薄膜の作製技術が必須であるが、プラチナ(Pt)との界面を利用する複合膜を作製した。ロックイン検波法によって異常ホール効果を測定し、垂直磁気異方性を確認した。マグノン凝縮効果に関しては、パラメトリックポンピングという技術を確立することを目指し、マグノン励起の高強度入力を行った。その結果、マグノン密度をブリルアン散乱分光法で検出することで、パラメトリックポンピングによる高密度マグノン生成が実現できていることがわかった。パラメトリックポンピングに必要な励起磁場と励起高周波パワーの関係を詳細に解析することで、最安定状態にマグノンが凝縮していることが検出できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マグノニック機能の創出には、半導体電子制御にはない柔軟なデバイス設計が求められる。熱利用は、アクティブ入力素子のエネルギーを活用する方法の一つであり、CMOS等とのハイブリッド化によってマグノンキャリア制御技術に発展する可能性がある。当年度は、マグノン媒体の加熱・冷却によるマグノン伝搬変調に着手し、この基礎現象を開拓することができた。電圧効果によってマグノンの伝搬制御を目指すために、電界効果を得ることができる材料加工技術を着実に進展させた。一方、凝縮効果に関しては、パラメトリックポンピングという基礎技術の構築にとどまった。以上の理由により、マグノニック機能創発の基礎現象の研究という観点からは、順調にすすんでいると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度で開拓した熱勾配効果、電圧効果と凝縮効果についての基礎研究を着実に進めていく。熱勾配に関しては熱印加機構が試作段階の域を出ていないため、改良したデバイスを作製することで、熱勾配によるマグノンモード変換を目指す。これによりマグノニック機能の多段化の可能性を探る。電圧効果については、コバルト(Co)超薄膜の作製に成功しており、電界効果を発揮できる素子構造を作製して、実験を着実に推進することによりマグノンゲート制御に到達できると見込まれる。またパラメトリックポンプによる高密度マグノン凝縮の作製は、信号増幅というマグノニック機能の重要な意味を持っている。さらに、マグノン凝縮のダイナミクスを研究し、機能創発を探る。
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Research Products
(10 results)