2021 Fiscal Year Annual Research Report
マグノニック機能創発のための電圧効果と凝縮効果の研究
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19H00861
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
関口 康爾 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 教授 (00525579)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
立崎 武弘 東海大学, 工学部, 講師 (20632590)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | スピン波 / マグノン / 量子ビット |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、マグノニック機能の一つとしてマグノン量子凝縮効果に関する研究を中心に実施した。量子凝縮は室温・大気中で生じる巨視的量子現象であり、新しい量子コンピュータ・量子ビットに応用可能と期待されている分野である。今年度は、マグノン励起法と共振器回路を見直し、高周波対応基板における共振器の設計を新しく作製した。パラメトリックポンピングと呼ばれる励起方法において、これまでよりも低エネルギーマイクロ波入力によってマグノン量子凝縮を引き起こすことが可能となり、ブリルアン散乱分光法によって凝縮効果を示すマグノンの時間発展を詳細に検出することに成功した。その結果、量子凝縮体を形成するのに必要な入力マイクロ波パワー閾値が定量的に評価することができた。最安定状態に存在する量子凝縮体とポンプ生成されるマグノンとが相互作用し合い、ポンプマグノンの生成が抑制されるメカニズムが存在することがわかった。
また、ガーネットのスパッタ成膜に取り組み、ナノメートルスケールの膜厚で磁気損失の低いガーネット試料構造を作製することに成功し、スピン波の伝搬が100マイクロメートルほども減衰しないで伝搬することを観測できた。今後、電圧効果が有効に作用する界面構造を作製しマグノニック機能の開発に挑戦する。また今年度は薄膜ガーネットを用いて、プラチナ電極と銅電極を複数組み合わせて、スピンオービットトルクによるスピン波励起・検出を行い、励起効率などを定量評価することができた。この実験は、これまでマイクロ波を必要としていたデバイスに対して、直流電流で局所的にスピン波を励起するという新しい側面を開拓してたことになる。スピンオービットトルクの強度を強めることで、高効率・局所励起なマグノニック機能を開発していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マグノニック機能の新しい側面として、室温・大気中で動作可能な量子ビットというものがある。今年度の研究では、この基礎技術となる量子凝縮体作製法を詳細に検証し、量子凝縮体の寿命や入力マイクロ波エネルギーの閾値などを評価することに成功した。当年度はさらに、熱勾配によってマグノンモードを変換させる新しい結果を残すことができ、熱効果によるマグノン伝搬制御を実現させた。これを応用した熱流による凝縮体の制御の可能性も開いたといえる。薄膜作製技術によってガーネット薄膜構造を作製し、スピンオービットトルクによるスピン波励起・検出を実験し、その効率を評価するに至った。以上の理由により、マグノニック機能創発のための凝縮効果・電圧効果の開拓は、順調に進んでいると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本年度で開拓した熱勾配効果と凝縮効果についての基礎研究を着実に進めていく。熱勾配に関しては熱印加機構・マグノンモード変換が実用段階になったので、ペルチェ効果を生じる人工構造多層膜を作製し、スピン波の伝搬制御に応用する。また、前年度までに到達したコバルト(Co)超薄膜の作製により、電界効果を発揮できる素子構造を作製して、実験を着実に推進することによりマグノンゲート制御に到達できると見込まれる。パラメトリックポンプによる高密度マグノン凝縮の実現は、量子ビット作製の基礎技術として期待できる。量子凝縮体を制御するために、これまでに得てきたマグノニック結晶や熱効果の成果を活用して、室温・大気中で利用可能な量子ビット開発を目指し、マグノニック機能創発を探る。
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