2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19H00862
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
荻 博次 大阪大学, 工学研究科, 教授 (90252626)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
草部 浩一 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (10262164)
渡邊 幸志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (50392684)
長久保 白 大阪大学, 工学研究科, 助教 (70751113)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ダイヤモンド / グラファイト / ピコ秒超音波 / 弾性定数 / 熱伝導率 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノダイヤモンドや多層グラフェン等のナノ炭素材料は、極めて高い弾性率や熱伝導率などの優れたフォノン物性しめすが、その基礎的理解が十分ではない。本研究プロジェクトにおいては、極めて高精度の弾性率や熱伝導率計測を解して、これらナノ炭素のフォノン物性を明らかにすることを目的としている。本年度は、12Cと13Cのホモエピタキシャルダイヤモンド超格子薄膜を作製し、顕微ピコ秒レーザー超音波法を用いて、膜厚方向の熱拡散率の精密評価を行い、また、ブリルアン振動計測により、膜厚方向の弾性定数を測定した。さらに、超格子ダイヤモンド薄膜の膜厚方向の熱伝導率を理論的に解析し、実験結果と比較することにより、その熱拡散現象を支配する因子を突き止めることに成功した。さらに、熱モード計測により、ナノ多結晶ダイヤモンドの熱伝導率の計測に成功し、これが、従来考えられていた値よりもかなり大きな値であることを見出した。さらに、多層ナノグラフェン薄膜に対して、超高周波領域における超音波減衰の周波数依存性を正確に計測することに成功した。その結果、従来考えられていたフォノンーフォノン相互作用では説明することのできない挙動であることが判明した。これは、ファンデルワールス相互作用に直接起因すると考えられ、未解明であるファンデルワールス相互作用の理解に重要な知見を与えることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
12C /13Cのナノダイヤモンド薄膜超格子の弾性定数および熱伝導率を実験的に計測することに成功した例は世界的に見ても無く、非常に重要な成果である。直感的には、超格子構造の周期が小さいほど、結合界面の数が増えるために、界面でのフォノン散乱や界面結果の存在により、熱伝導率や弾性率は低下するように思われるが、弾性定数に関しては、単層のダイヤモンド薄膜の値とほぼ等しく、超格子周期に依存することがなかった。このことは、我々が作製した同位体ダイヤモンド薄膜の品質が極めて高いことを保証する結果であり、界面においてほぼ欠陥を生じていいないことがわかる。このような高品質の試料の作製ノウハウを獲得したことも非常に重要な成果である。
さらに、界面欠陥が存在しない超格子薄膜材料に対して得られる熱伝導率は、真の熱伝導の起源を特定する点においても重要である。本年度におていは、ダイヤモンド構造を成す格子モデルを構築し、超格子同位体ダイヤモンド薄膜の熱伝導率を理論的に計算した。その結果、超格子による群速度の低下による熱伝導率の低下が主要因であり、界面散乱の効果を上回ることがわかった。
さらに、熱モード計測により、ナノ多結晶ダイヤモンドの熱伝導率の計測に成功し、これが、従来考えられていた値よりもかなり大きな値であることを見出した。これまで、ミリメートルサイズの単結晶ダイヤモンドの熱伝導率を正確に計測することは困難であったが、本研究により開発した、位相スペクトルを用いる熱モード計測によりこれを初めて可能とした。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、12C /13Cのナノダイヤモンド薄膜超格子の弾性定数および熱伝導率の研究を継続し、未解明であった同位体ダイヤモンド超格子のフォノン物性、特に、熱拡散について、計法や理論モデルをさらに発展させ、その本質を理解することに尽力する。また、自立薄膜を作製して、超音波減衰の計測精度を上げ、超高周波域での超音波減衰という切り口から、ナノ炭素材料のフォノン物性の理解を切り開く。超音波減衰と熱伝導率はともにフォノン物性として関連するため、この関連を詳しく調べる。さらに、単結晶グラファイト膜の低温・強磁場におけるフォノン物性を調べ、ファンデルワールス相互作用に関する知見を深める。さらに、ナノダイヤモンド材料の応用として、センサー開発にも挑む。
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Research Products
(21 results)