2019 Fiscal Year Annual Research Report
Ab initio strong-field physics and attosecond science for molecules
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19H00869
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石川 顕一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (70344025)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アト秒科学 / 高強度場物理 / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、高強度レーザーパルスやアト秒光パルス下における多電子系の非線形・非摂動・非平衡ダイナミクスを、現実的な計算時間で正確に計算できる第一原理計算手法の開発(第一原理高強度場物理・アト秒科学)を進めてきた。多配置展開やクラスター展開による複数の新しい手法を理論的に定式化し、さらに、それらに基づく数値計算プログラムの開発を原子を対象にして進め、最近では、実験のベンチマークとなり実験を先導する数値計算を可能にした。近年の分子を対象とする実験の進展を踏まえて、本研究では、この独自の卓越した第一原理計算技術を、一般の分子を取り扱えるように拡張することを目的として、研究を行った。 核のクーロンポテンシャルは核近傍で局所的に高い空間分解能を要求する。さらに核が動く場合、高分解能が必要な領域は時々刻々変化する。 空間を一様に細かいメッシュで離散化しようとすると、多くの電子を含む分子ではその計算コストは現実的でない。この問題を解決し、我々が これまでに開発してきた数値計算プログラムの応用範囲を分子に広げるため、原子核近傍での高い格子点密度と遠方での十分かつ低い格子点密度を同時に実現する一般化曲線座標および擬ポテンシャルの導入、Adaptive mesh refinementの導入を進めた。 その結果、直交曲線座標、擬ポテンシャル、外部複素スケーリングを使って、時間依存ハートリーフォック法を数値計算プログラムとして実装することに成功した。高強度レーザーパルス中のHe, Ne, 水素分子について既存の離散化を用いたプログラムによる結果と一致することを確認し、さらにアセチレンからの高次高調波発生を計算した。また、その強度が、分子軸とレーザー偏光の相対的な角度に依存することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一般化曲線座標および擬ポテンシャルの導入、Adaptive mesh refinementの導入を順調に進め、直交曲線座標、擬ポテンシャル、外部複素スケーリングを使って、時間依存ハートリーフォック法を数値計算プログラムとして実装することに成功した。高強度レーザーパルス中のHe, Ne, 水素分子について既存の離散化を用いたプログラムによる結果と一致することを確認し、さらにアセチレンからの高次高調波発生を計算した。また、その強度が、分子軸とレーザー偏光の相対的な角度に依存することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、我々がこれまでに開発してきた数値計算プログラムの応用範囲を分子に広げるため、原子核近傍での高い格子点密度と遠方での十分かつ低い格子点密度を同時に実現し、また原子核が動く場合にも拡張できる、複数の新たな柔軟かつ効率的な離散化の、数値計算プログラムへの実装を進める。特に、一般化曲線座標および擬ポテンシャルの導入、Adaptive mesh refinementの導入を進める。たとえば、非直交曲線座標や多配置展開への拡張、円偏光への対応が考えられる。また、重要な実験プローブである角度分解光電子 スペクトルを計算するために、tSURFF法を適用する。このようにして、一般的な分子に対して高次高調波発生や光電子分光といった実験と定量的に比較できる第一原理計算を行うための基盤の整備を進める。
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