2019 Fiscal Year Annual Research Report
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19H00870
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
VERMA Prabhat 大阪大学, 工学研究科, 教授 (60362662)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬越 貴之 大阪大学, 工学研究科, 助教 (00793192)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 先端増強ラマン散乱顕微鏡 / 近接場光学 / プラズモニクス / バイオイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、生体試料観察に特化した先端増強ラマン顕微鏡を開発することも主たる目的としている。先端増強ラマン顕微鏡ナノスケールの空間分解能でラマンイメージング可能な顕微法であり、その優れた分析能で生体試料を観察できるようになれば、生命科学にナノスケールの詳細かつ新しい知見を与えられる。 生体試料を観察できる先端増強ラマン顕微法を開発するために、まずは液中環境で使用可能な原子間力顕微鏡をラマン顕微鏡と複合化させることから始めた。液中環境下で原子間力顕微鏡カンチレバー探針を制御・操作できることを確認した。そのほか、精密な探針操作を利用したナノリソグラフィや表面ポテンシャルイメージングなど、多機能に生体応用できることを確認した。また、ラマン顕微鏡と同期して操作できるよう制御プログラムを整え、実際に先端増強ラマン計測できることを確認した。ラマン顕微鏡に搭載する関係で、振動や温度揺らぎ、送風などの外乱によってカンチレバーが不安定化することが判明したが、これはアクティブ除振台等を用いることによって、改善できると考えている。 金属探針は、先端増強ラマン顕微鏡において極めて重要である。強力な金属探針の作製方法を確立すべく、様々に取り組んだ。原子間力顕微鏡用カンチレバー探針のピラミッド構造を利用して、その片面にのみ滑らかな銀薄膜をコーティングすることによって、非常に安定的に先端増強ラマン計測できる金属探針が得られることを見出した。本手法は、非常に高い増強度と再現性を両立しており、かつ簡便である。生命現象の分析結果に強いエビデンスを持たせるには、統計的な解析が不可欠であるが、そういった意味でも生体応用にうってつけの金属探針作製方法を確立することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、液中環境下で動作する先端増強ラマン顕微鏡の構築と、生体応用可能な金属探針作製技術の確立を主な計画としてあげていた。液中対応の先端増強ラマン顕微鏡については、液中使用可能な原子間力顕微鏡をラマン顕微鏡と複合化させることによって、まだまだ細部の最適化は必要ではあるが、大枠としては構築することができた。実際に液中環境での探針操作や、原子間力顕微鏡の多機能性を活かした計測など、色々と動作確認できた。また、実際に開発した先端増強ラマン顕微鏡で、先端増強ラマン計測を行うことにも成功している。金属探針作製技術についても、原子間力顕微鏡カンチレバーのピラミッド構造を利用して、片面にのみ滑らかな銀薄膜をコーティングするという方法で、非常に高い増強度と再現性を有する金属探針を簡便に作製できることを見出した。以上から、初年度に計画していた通り、概ね順調に進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
生体試料観察に特化した先端増強ラマン顕微鏡の基本的な構成は完成させることができたため、細部の装置開発を様々に行い、実際の生命現象ナノ観察へとつなげる。まずは、装置の安定化である。生体試料の動態を追跡するためには、長時間安定して先端増強ラマン観察できる必要がある。しかしながら、一般的に機械的なドリフトによって、時間と共に金属探針が入射フォーカスの中心からずれてしまう。そこで、ドリフトを自動補正する機構を開発・導入することによって、安定化を図る。具体的には、ピエゾ駆動のミラースキャナーを開発し、入射光学系に導入する。イメージングの1ライン毎に、ミラースキャナーでラスター走査することによって、探針からの散乱光が最も強くなる位置を特定し、自動的に金属探針が入射フォーカスの中心に来るように補正させる。また、ドリフトはz方向にも生じるため、こちらもピエゾ駆動の対物レンズポジショナとドリフト検出機構を導入することによって補正する。これによってxyz3次元のドリフト補正を実現できるため、長時間の先端増強ラマン計測が可能となる。また、対物レンズポジショナは、最終的に細胞など凹凸の大きな試料の3次元イメージングへも応用する計画である。 金属探針の開発も引き続き行う。再現性・増強度共に優れた金属探針作製法を開発することに成功したが、生理条件下での測定において重要なのは、金属探針の保護技術である。溶液中を漂う汚染物質が金属探針に吸着しないよう、まずは化学的な方法でシリカコートする方法を試みる。原子層堆積法も極めて有効であると考えられ、共用設備の利用を検討する。 生体試料観察用の先端増強ラマン顕微鏡開発が主たる目的ではあるが、もちろん開発が進めばまずは脂質二重膜などから、実際の生命現象のナノ観察へと展開していく予定である。
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Research Products
(6 results)