2019 Fiscal Year Annual Research Report
マグネシウムシリケート水和物:その正体と生成の全容解明
Project/Area Number |
19H00878
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 努 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10313636)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大竹 翼 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (80544105)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | マグネシウムシリケート水和物 / 低結晶性物質 / 地球化学モデリング / 有害物質 / 隔離 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年度は、本研究の検討項目のうち、主に1)様々な組成のマグネシウムシリケート水和物(M-S-H)の合成、2)天然に産するM-S-Hの探査と現地調査、3)合成および天然M-S-Hのキャラクタリゼーションを実施した。その結果、以下のことが明らかとなった。1)天然を模擬したフロースルー式実験の結果から、M-S-Hの生成は瞬時に達成され、マグネシウムを供給する酸化マグネシウムの溶解プロセスが律速段階であることが明らかとなった。2)調査を行ったフィリピンパラワン島Nara地区のアルカリ地下水が浸透している堆積層から採取した試料、および北海道占冠村赤岩青巖峡の蛇紋岩地滑り地帯からアルカリ地下水が浸出している法面に認められる白色沈殿物を詳細に調べた結果、M-S-Hの産出を認めることができた。また湧水や地表水中に含まれる溶存イオン濃度を測定した結果、Nara地区ではアルカリ水が堆積層の鉱物と反応することによって、赤岩青巖峡では湧水が流出してその場の地表水と混合することでM-S-Hが生成することが明らかとなった。また、これらのM-S-Hの生成は、すでに出版されている熱力学データで説明可能であることも確認した。3)合成および天然M-S-Hのキャラクタリゼーションを実施して比較・検討したところ、赤岩青巖峡で認められたM-S-Hは、過飽和状態から実験室で沈殿・生成させたものに比べて低結晶質蛇紋石と類似した結晶であること、Nara地区で認められたM-S-Hもスメクタイトと類似の物性を有する結晶であることが明らかとなった。天然で認められたM-S-Hが2つのサイトで異なる理由については不明であるので、次年度以降に明らかにしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施している内容に関してはほぼ予定通りに進んでおり、特に2つの天然サイトで認められたマグネシウムシリケート水和物(M-S-H)の生成とそのキャラクタリゼーションに関しては、新規で発見された内容を含むものであるので論文に投稿済で、赤岩青巖峡のM-S-Hに関する原稿は受理され公表を待っている状態になっている。したがって、天然産M-S-Hの研究に関しては当初の計画以上に進展しているものと判断できる。一方、本研究の内容の広報のために設置を予定しているホームページの設置準備は遅れ気味ではあるので、次年度の前期までには設置・公表していく予定である。それ以外については、他の研究内容も含め、全体的にはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度明らかにされたように、天然で産出するマグネシウムシリケート水和物(M-S-H)は複数の形態をとりうることが報告されているため、どのような要因により、どのような組成・結晶構造をもつものが生成されるのかを実験的手法と共に明らかにしていきたい。また、合成・天然M-S-Hの詳細なキャラクタリゼーションにより、M-S-Hが既報の結晶質の鉱物との類似性が判明したので、それらの結晶構造を出発点として、NMR、顕微ラマン、IRスペクトルを精緻に解析した結果と分子動力学的検討を進め、次年度からM-S-Hの構造推定を推進していきたい。
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Research Products
(7 results)