2021 Fiscal Year Annual Research Report
パルスラジオリシスによる基礎過程解明を通じたシンチレータ設計指針の確立
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19H00880
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
工藤 久明 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (00334318)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 真一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (20511489)
室屋 裕佐 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (40334320)
越水 正典 東北大学, 工学研究科, 准教授 (40374962)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | シンチレータ / 放射線 / パルスラジオリシス / 時間分解測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度には、発光中心が含有されていない無機シンチレータを対象としたパルスラジオリシス実験を進めた。対象としたものは主に、Bi4Ge3O12、CdWO4、およびCeF3である。ピコ秒領域およびナノ秒領域での測定を進めた。いずれのシンチレータにおいても、ナノ秒領域については、いずれも、ブロードな吸収帯が観測された。また、シンチレーション減衰挙動と一致するような過渡吸収信号の減衰が観測された。これらの結果から、ナノ秒領域において観測した過渡吸収スペクトルは、これらのシンチレーションに寄与する自己束縛励起子に帰属されるものであると結論付けた。 また、ピコ秒領域では、ナノ秒領域の場合と同様のスペクトルが観測された。そのため、ピコ秒領域においても、自己束縛励起子による過渡吸収が支配的であると結論付けた。その吸光度は、1ナノ秒以内において顕著に減少した。これは、自己束縛励起子の数が急速に減少することに対応する。これがもしシンチレーションに至る過程であるとなると、1ナノ秒以内の高速成分が観測されることとなる。しかしながら、そのような成分はシンチレーション減衰挙動においては観測されなかった。即ち、観測された自己束縛励起子の急速な減少は、無放射失活過程に対応する。このような過程はこれまでにシンチレータで観測されておらず、世界で初めての観測となる。これはおそらく、スパー内での電離の再結合により生じた複数の自己束縛励起子間による相互作用に起因するものである。 さらに、マイクロ秒以上の領域においても、わずかに過渡吸収信号が観測された。また、過渡吸収スペクトルについては、ピコ秒およびナノ秒のものとはやや異なった。これはおそらく、再結合などに至らなかった電離状態など、シンチレーションに至らずに残存した電子正孔対などに帰属されるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね当初の予定通り進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に沿って研究を遂行する。
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Research Products
(11 results)